鑑賞眼

Noism×鼓童「鬼」 新潟から初コラボ2作 内部に潜む怪物も顕わに

産経ニュース
Noismと鼓童が一体となった新作「鬼」。中央は井関佐和子(撮影:村井勇)
Noismと鼓童が一体となった新作「鬼」。中央は井関佐和子(撮影:村井勇)

新作2本を通じ、舞台上にいた様々な鬼たち。前半の「お菊の結婚」では、異人や女衒、あるいは花嫁の角隠しに見え隠れする。そして後半の「鬼」では、佐渡の金工師に鬼の起源をたどる地元・新潟らしい伝説が、力強い太鼓の響きで立ち上がる。演出・振り付けを手掛けた金森穣(Noism芸術監督)は、異形の存在を〝鬼〟とみなして怖れ、排除し、時にはわれわれ自身も鬼になる━そんな人間の内部に潜む怪物をも、ダンスで具現化した。恐ろしい、でも凝視せずにはいられない舞台(舞踊と太鼓の共演)である。

ダンサーが襖を動かし、カラフルな照明で美しい空間を演出した「お菊の結婚」(撮影:村井勇)
ダンサーが襖を動かし、カラフルな照明で美しい空間を演出した「お菊の結婚」(撮影:村井勇)
「お菊の結婚」で井関佐和子(手前中央)が遊女、お菊を演じた(撮影:村井勇)
「お菊の結婚」で井関佐和子(手前中央)が遊女、お菊を演じた(撮影:村井勇)

新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)の専属舞踊団「Noism(ノイズム)」と、佐渡市を本拠にする太鼓芸能集団「鼓童」の初共演。ともに新潟に根を張り、世界的活動を続ける芸術集団が、地元ならではの新作を新潟から発信し、全国を回る舞台だ。7月1日、新潟・りゅーとぴあでの公演を鑑賞した。

前半「お菊~」は、ストラビンスキー作曲のバレエ作品として知られる「結婚」の、Noism版。オペラの「蝶々夫人」と「番町皿屋敷」が混ざったような筋立てで、明治の日本を訪れたフランス海軍将校(ジョフォア・ポプラヴスキー)が、遊郭でお菊(井関佐和子)を買おうとする。異人を嫌う日本人たちは、文楽人形のような人形振りで踊り、無表情を貫くが、そのキッパリとした動きから「拒絶」の感情が伝わる。ダンサーたちがカラフルな照明に照らされた襖をスピーディーに動かし、魔法のように場面転換を図る演出も、日本の神秘性を表す。要するに外国人目線で見た「ニッポンジン」を人形に見立てているのだが、外国人を排除して殺める彼ら彼女らもまた、鬼なのである。お下げ髪の井関が可憐ながら、芯の強さを秘めた踊り。遊女たちと対になるように、男性ダンサーも切れのいいダンスを見せるが、楼主とその息子、若い衆と役の違いがもっと出れば、なおいい。

「鬼」では役行者率いる男たちが、佐渡で遊女たちとすれ違う(撮影:村井勇)


「鬼」で佐渡の金を表すような金の上で踊る金森穣(手前右)と井関佐和子(撮影:村井勇)

そして後半「鬼」が、いよいよ鼓童との初コラボ。作曲家・原田敬子が新潟や佐渡を訪れ、生み出した新曲を、鼓童が生演奏する。Noismのダンサーだけでなく、暗闇から浮かび上がる鼓童メンバーの鍛え上げた肉体も美しい。そして静寂をつんざく一音から、怒涛のように「鬼」の世界が展開。役行者(山田勇気)に率いられ佐渡に渡った鉱山労働者たちと、遊郭を開いた清音尼(井関)と遊女たちという、男女が出会い、すれ違い、ぶつかり合い、ともに鬼と化していく。佐渡の豊かな金と遊郭という、いわば人間の欲望がむき出しになっていく強い踊りが、太鼓の強烈な響きで強靭さを増す面白さ。そしてクライマックスで、鬼として登場する金森の踊りは、やはり圧倒的な存在感だ。

原田の新曲は、Noismと鼓童、双方にとって挑戦だったと思うが、それがいい緊張感を生み、ドキドキとさせられた。新潟に暮らし、新潟を愛し、地元文化や歴史に敬意を払うメンバーが表現する新潟の「鬼」。だからこそ舞台上の鬼たちは、他者ではなく、彼ら彼女らであり、われわれ自身でもあった。新潟ブランドのこの新作を、レパートリーとして大切に深化させてほしい。新潟、埼玉公演は終了。京都、愛知、山形公演あり。(飯塚友子)

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