「またか」-。全国を対象とした新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」について、政府は14日、当初予定していた7月前半の開始を断念した。今年1月にも再開予定だった観光支援策「Go To トラベル」と同様、新型コロナウイルスの感染者急増により、スタート直前に延期を余儀なくされた形で、観光関連業界は落胆の色を隠せない。
「旅行そのものが感染拡大に直結しているという印象を与えかねず遺憾だ」
日本旅行業協会の高橋広行会長(JTB会長)は全国旅行支援の延期が濃厚となっていた7日の記者会見で、そう懸念を示した。
感染拡大との因果関係を否定する理由として、同会が昨年に2回実施した大規模モニターツアーで感染者が出なかったことに加え、行動制限がなかった今年のゴールデンウイークの後も感染状況の目立った悪化は見られなかったことを挙げた。
「県民割」を事実上、全国に拡大する全国旅行支援。国内一律で行う「Go To」との大きな違いは、その都度の感染状況などを踏まえ、都道府県ごとに実施や中断、再開を判断できることだ。高橋氏は観光業者の企業体力が「限界にきている」と訴え、早急に全国旅行支援を始めた上で、判断を都道府県に委ねることが「妥当」とした。
観光業界だけでなく、旅客需要が回復傾向にある航空業界も、全国旅行支援に需要のさらなる押し上げ効果を期待している。それだけにANAホールディングスの芝田浩二社長は14日、欧米では感染者数が増加傾向にあったとしても、行動制限を課していない現状を踏まえ、「(新型コロナ対応で)先行する海外の状況を含め、科学的な見地から開始時期を判断いただきたい」とコメントを出した。