国連安全保障理事会は12日、食料や医薬品などが不足するシリア北部の反体制派支配地域にトルコから人道支援物資を運ぶ「越境支援ルート」に関する会合を開催し、来年1月まで半年間延長する決議案を採択した。支援ルートの有効期限は安保理の不一致により10日で切れており、約400万人の人道状況の悪化が懸念されていた。
採決では非常任理事国10カ国と中国、ロシアが賛成した。米国と英国、フランスは棄権した。米英仏と非常任理事国10カ国は国連事務局の見解と同じ来年7月まで1年間の延長を目指したが、8日の会合で半年間の延長を主張するロシアが常任理事国として拒否権を行使し、頓挫していた。
12日の会合で、決議案をノルウェーと共同提案したアイルランドのネイソン国連大使は「支援継続が最も重要だ」と半年間の延長で譲歩した理由を説明。非常任理事国10カ国を代表し賛成理由を説明したケニア代表も「支援の必要性を満たすことが私たちの最も基本的な関心事だ」と述べた。
米英仏の代表は「半年間の延長では不十分だ」と訴えたが、拒否権行使につながる反対票は投じず、半年間延長で妥結した形だ。
ロシア代表は、国連などによる直接支援は「シリアの主権を侵害している。より多くの支援がシリア政府を通じて行われるべきだ」と主張してきた。
ノルウェーのユール国連大使は会合後、「ロシアの議論の出発点は支援ルートは必要ないというところだった」と振り返り、支援継続は成果だとの認識を示した。(平田雄介)