14日に授賞式が開かれる「第35回独創性を拓く 先端技術大賞」(主催・産経新聞社)で、社会人部門の大賞「経済産業大臣賞」と学生部門の大賞「文部科学大臣賞」に輝いた研究を2回にわたって紹介する。
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1回目は経済産業大臣賞の「大規模深層学習のための自動並列処理ソフトウエアRaNNC」。情報通信研究機構の田仲正弘氏、鳥澤健太郎氏、東京大学の田浦健次朗氏、塙敏博氏らが共同で開発した。
人工知能(AI)は、人間の神経細胞(ニューロン)の仕組みをコンピューター上で再現した〝ニューラルネット〟を基にしている。このAIによる画像認識や対話システムなどを高性能化するには、ニューラルネットを大規模化し、多くの情報を早く学習(深層学習)させなければならない。ただ、実際の学習では多数の計算機(GPU)で膨大なデータを並列処理する必要がある。
これまでは、データを複数の計算機にどう分担させるかを細かく指定しなければならず、専門家のいない組織では運用することが難しかった。
今回開発した処理ソフト「RaNNC」は、計算機の分担を自動的に決める。データをGPUに分担する組み合わせは無数にあるが、実際に試して高速なものを選ぶことはできないため、より効率がいい有望な組み合わせにだけ絞り込めるよう工夫した。RaNNCの活用で、容易にAIを高度化できるようになることが期待される。(青山博美)