安倍晋三元首相の銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者(41)が使用した手製銃について、銃器の専門家は、市販の材料で自作できる構造との見方を示している。
報道された画像を確認した元陸上自衛隊富士学校研究員、照井資規氏は、今回使用された銃器にバッテリーのようなものが設置されていたことに注目する。
照井氏によると、バッテリーは電動ガン用に使われる高出力のものと似通っているとし、そこからコードが伸びて二股に分かれ、2つの筒状の銃身につながっているようにみえるという。
照井氏は「通常の銃のように撃鉄を下ろした衝撃で発射するのではなく、電動で発射する仕組みの銃器の可能性がある」とし、「金属パイプなど、市販の材料で十分作成できる構造とみられる」と分析する。
また、市販の材料で作れるのは銃身だけではなく、照井氏は「今回の銃器のような構造であれば実弾も自作した可能性がある」とも指摘する。
照井氏によると、銃には通常、火薬の詰まった定形の銃弾が用いられる。だが、今回のような筒状の銃身の場合、花火などに使われる黒色火薬と金属製の玉を銃身に詰め、スイッチの先に加熱装置を付けて圧力をかけて発火させれば、「殺傷能力のある銃ができ上がる」とみる。
構造は「電動で発火する火縄銃」ともいえ、2013年のボストンマラソンのテロ事件で使われた爆弾とも、爆発させる方法が似ているという。
ただ、銃身が爆発しない程度の圧力に留めるにはバランスが難しく、照井氏は「実験を相当の回数重ねた可能性がある」と話した。
映像では発砲後に白煙が舞い上がったことが確認でき、照井氏は「黒色火薬が燃えた煙の可能性がある」と分析。「すべて市販の材料で作ったとすれば、警察が把握するのは容易ではなかったかもしれない」としている。