大相撲名古屋場所の初日、2場所連続優勝を狙う横綱照ノ富士を小結阿炎が送り出しで破った。
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新型コロナウイルスの感染拡大以来、初めて観客数を制限せずに開催された今場所。初日に来場した6300人超を最も沸かしたのは阿炎だった。
結びの照ノ富士戦。立ち合い、もろ手で突いていったが、全く押し込めない。逆に横綱が前に出てくると、こらえきれず一気に土俵際に追い込まれてしまう。この窮地で出たのが、阿炎らしいがむしゃらで素早い身のこなしだ。右に回り込みながら相手の左腕を引っ掛けるように体を入れ替えることに成功。送り出して殊勲の白星をもぎ取った。
「よく覚えていない。必死に体を動かしたら勝てた」。客席から紫色の座布団がいくつか舞うのを横目に、37本の懸賞の束を受け取った。
まさに場所前、「技術面、力では圧倒的に横綱が強い。攻略法も何もない。全力で何かした時、チャンスが転がってくると思う。諦めず、最後まで力を出し切ること」と語っていた通りの相撲である。初日の3日前に、痛風のような痛みが出た左足首は「万全な調子にまとめているので大丈夫」だという。
「今日、思い切りのよい相撲が取れたので、明日からも思い切りのよい相撲を取りたい」
館内を熱く盛り上げるべく、さらに暴れ回れるか。(宝田将志)