書評

『吸血鬼ラスヴァン 英米古典吸血鬼小説傑作集』バイロン・ポリドリほか著、夏来健次・平戸懐古編訳(東京創元社・3300円) 東欧の伝説がエンタメに

産経ニュース
『吸血鬼ラスヴァン 英米古典吸血鬼小説傑作集』
『吸血鬼ラスヴァン 英米古典吸血鬼小説傑作集』

吸血鬼伝説は東欧に端を発するが、それが文学作品として根付いたのは、恐怖と怪奇を呼び物にしたゴシック・ロマンスの下地があったイギリスとアメリカだった。ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』(1897年)がその頂点をなす。本書は、その『ドラキュラ』に至るまでの作品を主とした、19世紀英米の吸血鬼小説選集である。

16年夏、スイスはレマン湖のほとりにある屋敷に詩人バイロンとシェリーおよびその同行者たちが集(つど)っていた。怪談でも書こう、というバイロンの発案から、その後シェリーの妻となるメアリーが『フランケンシュタイン』を書き始めたのは有名な話だが、バイロン自身は吸血鬼の物語を構想する。それは未完の断章にとどまったものの、バイロンの侍医ポリドリがそこに着想を得て「吸血鬼ラスヴァン」(19年)を書き上げる。英語圏初の吸血鬼小説の誕生である。本書にはバイロンの断章「吸血鬼ダーヴェル」(19年)とともに収録されており、合わせて読むと興味深い。この経緯からも分かるようにイギリスにおいて吸血鬼の物語は、大国への怨念がこめられた東欧の吸血鬼伝説と異なり、エンターテインメント性が強かった。

それが端的に現れているのが「吸血鬼ヴァーニー」(47年)だ。低所得者向けに安価な週刊連載形式で書き続けられたこの作品は長大で一貫性を欠くが、各章にヤマ場が配置されている。本書の抄訳を読めば、当時流行していた三文恐怖小説の世界を知ることができるだろう。

異色なのが「吸血鬼ラスヴァン」を意識し、そのわずか2カ月後にアメリカで出版された「黒い吸血鬼」(19年、本邦初訳)だ。吸血鬼が黒人に設定され、人種差別の根底に血の混交への恐怖があることを示す。このいかにもアメリカ的な主題をもつ作品は、支配者層が被支配者層を恐れるという点で、大英帝国が肥大化しすぎたことに対する世紀末のイギリス人の不安を反映した『吸血鬼ドラキュラ』に通底するものがあり、エンターテインメントの枠に収まりきらない問題を提起している。

巻末の解説では、本書に収録された作品にとどまらず、19世紀英米の吸血鬼小説史が概観されていて有益である。

評・道家英穂(専修大教授)

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