一筆多論

NATO拡大認めたロシア 岡部伸

産経ニュース
ロシアのプーチン大統領(ロイター)
ロシアのプーチン大統領(ロイター)

プーチン露大統領が北大西洋条約機構(NATO)拡大への反対を理由にウクライナで侵略戦争を続けることに憤りを覚える。

ロシアが主要8カ国(G8)入りと交換に拡大を認めた経緯があるからだ。

1997年3月、フィンランドの首都ヘルシンキで開かれた米露首脳会談でクリントン大統領は、ロシアにG8の地位と世界貿易機関(WTO)への早期加盟への支援を約束した。

見返りにエリツィン大統領は、ポーランド、ハンガリー、チェコのNATO加盟を容認した。同年NATOと基本議定書を結び、互いに敵と見なさないことを確認し、3国は99年にNATO加盟国となった。

『手打ち』を仲介したのが日本だった。東郷和彦元外務省欧亜局長が寄稿した情報サイト「ニッポンドットコム」によると、米露首脳会談に臨むクリントン大統領が橋本龍太郎首相に電話し「NATOの東方拡大をロシアにのませるために先進7カ国(G7)首脳会議へのロシアの参加を認めたい」と提案した。

橋本氏はこれに賛成しつつ、「『本気でロシアと話したい』と、エリツィン大統領に伝えてほしい」と要請したという。東方拡大を受け入れたロシアの挫折感に日本が寄り添い、ロシア中部のクラスノヤルスク会談で、「2000年までの平和条約締結に全力を尽くす」合意として結実した。

プーチン氏は、大統領代行だった00年に訪問した英・ロンドンで、将来NATOに加盟する可能性を示唆し、02年には「NATOロシア理事会」新設に関するローマ宣言に自ら署名しNATOに接近した。蜜月だったロシアとNATOは2度文書を交わし、協力強化で合意している。

だが、08年にNATO首脳会議でジョージアとウクライナの将来の加盟が約束されると、プーチン氏は欧米を敵視しジョージアに侵攻した。クリミアを併合した14年には代償を払って得たG8の地位を失った。

そもそも独立した主権国家は同盟相手を自由に選ぶ権利がある。旧ソ連を含む周辺国は自らNATO入りを目指した。武力で国境の一方的変更を試みるロシアには、彼らを引き留める国家としての魅力に欠けているからだ。ロシアの軛(くびき)から離れ、市場経済で豊かになろうと西側を目指す。ユーラシアにおける民主主義の東方拡大だ。

「独立国家共同体(CIS)脱退、NATO、欧州連合(EU)加盟を目指す」

23年前の99年2月、来日前にジョージアのシェワルナゼ大統領は「ロシアが政治、経済の混乱を続けており、経済的共生関係を築けない」と語り、市場経済による国造りを目指した。

一度拡大を容認したNATOを「脅威」だとして軍事侵攻を正当化するのは身勝手にも程がある。真の目的はウクライナに根付き始めた民主主義を終焉(しゅうえん)させ、従属国へ引き戻すことだろう。恐れているのはNATOではなく民主化だ。

NATO首脳会議でスウェーデンとフィンランドの加盟が支持され、北方拡大の手続きが始まった。

ロシアは自らまいた種によって「孤立」を深め、対露包囲網が広がる。前例のない制裁で夏以降、経済は大打撃を受けるだろう。今取るべき道は不法で不当な侵略をやめ、ウクライナからの即時撤退しかない。(論説委員)

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