熱海土石流被災地で工場再稼働「復興シンボルに」 一家で描くIZUSANの未来

産経ニュース
土石流災害で経営する「コマツ屋製麺所」を流された中島秀人さん。新しい工場のために、新しい看板の図案を用意した=静岡県熱海市(寺河内美奈撮影)
土石流災害で経営する「コマツ屋製麺所」を流された中島秀人さん。新しい工場のために、新しい看板の図案を用意した=静岡県熱海市(寺河内美奈撮影)

熱海で3代続く「コマツ屋製麺」の現社長、中島秀人さん(53)は、今月中旬にも工場を再稼働させる。「伊豆山復興のシンボルになりたい」と願う。

クラウドファンディングで存続

被災当時、4階建ての工場兼住宅には、中島さんと妻、義母、次女の茉子(まこ)さん(25)がいた。濁流が押し寄せる中、全員が隣の屋根に飛び降り、難を逃れた。

冷蔵庫やボイラーなどが損傷。「家族のために何かしたい」。茉子さんは姉とともに行動に出た。

7月下旬にクラウドファンディング(CF)を始めた。1カ月間で約900万円が集まり、存続にめどがついた。当時、広告会社で働いていた茉子さんはこれを機に退職を決意。今年4月から、中島さんがかつて修業した東京都内の製麺会社で働き始めた。技術面ではなく主に経理などの分野を学び、店の経営に還元させるつもりだ。

「選択肢これしかない」

「一緒に地獄を見たことで、彼女の人生を変えてしまったのではないか」。娘の決断に、両親の思いは複雑だった。中島さんは茉子さんが製麺会社へ入社する直前、「選択肢はこれしかない」と涙を流したことが忘れられない。「子供なりに親の姿を見て思うところがあったのだと思う」と心境をおもんばかるが、「親にできないことをやってほしい」と娘の背中を見守る。

当の茉子さんは、働きながら再出発の手伝いにも励む。CFで多くの個人から支援を得たことに感謝し、「うちは業者向けに麺を卸しているが、ゆくゆくは、個人のお客さまにも届けられるよう販路を広げられたら」と未来を描く。

新工場、看板も一新

中島さんの目下の懸念は復興計画の行方だ。現場一帯は立ち入り禁止区域に指定され、熱海市は解除時期を8月上旬に示す方針だが、「地元に戻るにも、家の修繕費用などの援助が必要。雨漏りの修理も昨年末からお願いして6月にやっと実現した」。地元住民らで作る「警戒区域未来の会」の代表でもあり、ニーズを市に届けるが、対応の遅さが際立つという。

《IZUSAN SINCE 1887》。禁止区域となった創業の地、伊豆山地区を離れ、区域外の上多賀(かみたが)地区に再建した新工場では、看板も一新。伊豆山への思いを忘れないために、そう刻んだ。中島さんは「まだまだ道半ば。泥臭くやっていきたい」。一家で手をたずさえ、新たな歴史を作っていく。(吉沢智美)

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