沖縄の「慰霊の日」である6月23日、県主催の沖縄全戦没者追悼式が糸満市の平和祈念公園で開かれた。来賓の岸田文雄首相が登壇すると、会場周辺に集まった基地反対派から「帰れ」「沖縄の声を聞け」「辺野古の海を守れ」などと罵声が飛んだ。
厳粛な慰霊の場を乱す振る舞いは、沖縄の恥でしかない。「首相に抗議するな」と言っているのではなく、場を考えてほしいのだ。だが、嘆かわしいことに、沖縄の追悼式で首相にやじが飛ぶのは、今や「お約束」になってしまっている。
発端は2015年の追悼式だ。故・翁長雄志知事(当時)が「平和宣言」を行った際、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について「到底、県民に受け入れられるものではない」と政府に強く中止を迫ったのである。
鎮魂の場に辺野古移設問題を持ち込んだこと自体、「追悼式の政治利用」として非難されるべき行為である。だが、集まった基地反対派は翁長氏に大きな拍手を送り、このあと登壇した安倍晋三首相(当時)に怒号を浴びせた。これが毎年繰り返される光景になってしまったのだ。
玉城デニー知事も、翁長氏の路線を引き継いだが、20年の「平和宣言」では、辺野古反対に直接触れなかった。
これに対し、沖縄の主要メディアや基地反対派は「なぜ、辺野古に言及しないのか」と知事を批判した。突き上げられた形の玉城氏は、翌年の追悼式から再び辺野古反対を持ち出さざるを得なかった。