孫を見守ること、妻への供養に 熱海土石流1年、泥の残る手鏡に悲しみ

産経ニュース
静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した大規模土石流から3日で1年。自宅跡地前の手作りの献花台に花を手向ける、妻を亡くした田中公一さん(左)と親族ら=3日午前(松本健吾撮影)
静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した大規模土石流から3日で1年。自宅跡地前の手作りの献花台に花を手向ける、妻を亡くした田中公一さん(左)と親族ら=3日午前(松本健吾撮影)

27人(災害関連死1人を含む)が死亡、1人が行方不明となっている静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区の大規模土石流。発生から1年となった3日、市は市立伊豆山小の体育館で、犠牲者遺族や関係者による追悼式を開催。発生時刻の午前10時28分に無線で市内一斉にサイレンを鳴らして黙禱(もくとう)し、犠牲者を悼んだ。

「いるのか」に返事なく

地区で生まれ育った田中公一さん(72)はこの日、流された自宅跡地近くに手作りした献花台を訪れ、手を合わせた。30年以上連れ添った妻の路子さん=当時(70)=を失った。

1年前。前日からの長雨が続いていた3日午前10時半過ぎ、山頂方面に住む知人の安否確認のため、車で自宅を出た。「上はもうダメだ。逃げろ」。知人と途中で出くわし、急いで戻ったが、平屋の自宅は崩落してきた土砂や家屋にのまれ、すでに大破していた。

家に残っていた路子さんをライトで照らしながら捜した。「いるのか」。返事はなかった。近くでゴーッという地響きがし、避難せざるをえなかった。

きれいなままの顔で

遺体は5日後、自宅近くで見つかった。捜索隊からは、ドアに押しつぶされるような体勢だったと聞いた。若いころに美容部員として働き、いつも身ぎれいにしていた伴侶。顔がきれいなままだったことが、せめてもの救いと感じた。

現在、身を寄せる市営住宅の仏壇には、路子さんが愛用していた手鏡を遺品として供える。ふちにわずかに残る泥に悲しみが呼び覚まされる。「1人だと何かあったときに動けないから」。好きだった晩酌はあれからしていない。

「混雑するだろうから」と一周忌の法要は今年6月中旬に済ませた。仕事の造園業はとうに再開し、今は地区内の別の土地に新居を建てるべく準備も並行して進める。「忙しいほうがあんまり考えずに済む」と話す。

家族の成長を見届ける

「人災」とされる被害にあって、土地の現旧所有者らを相手取った損害賠償請求訴訟などには参加していない。「怒りはもちろんある。ただ、妻は『あなたの人生を過ごして』と言っている気がする」

1年の月日が流れたこの日、祈りをささげた献花台の傍らには、離れて暮らす子供や孫たちがいた。「今日はみんなで来られて、よかった」。家族の成長をしっかり見届けることが、供養になると思っている。

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