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「すしざんまい」喜代村社長・木村清(3) 窮地、銀座のママに救われた

産経ニュース
豊洲市場の初競りで、史上最高額3億3360万円でマグロを競り落とした=平成31年1月
豊洲市場の初競りで、史上最高額3億3360万円でマグロを競り落とした=平成31年1月

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《バブル崩壊で冷え込んだ東京・築地に再び活気を。地元の期待を背負って平成13年4月、日本初の年中無休24時間営業のすし店「すしざんまい本店」をオープンした》


1号店をオープンするまで30年近く、水産業界に携わっていました。仕入れ先の人脈は豊富で、深夜であろうとお店で新鮮なすしネタを楽しんでもらえる自信はあったのです。おすしで人を集め、築地の復活に貢献したい。意気込んで「すしざんまい本店」を開店しました。

日本一の歓楽街・銀座に隣接し、国内最大の公設市場がある築地場外の一等地のお店です。朝は市場に買い出しにくる人、昼食時は住民や近くの会社のサラリーマン、午後は銀座の映画館帰りや歌舞伎座などでの観劇帰りの人と会社員、深夜から早朝は築地市場へのトラック運転手。需要は十分だと思っていました。それが一番期待していた深夜に、お客さんが来てくれない。

そのころの築地市場には毎日、夜の11時ごろから水揚げされた魚や収穫した野菜などを満載にしたトラックが、全国から6千台も集まっていました。トラックの運転手さんたちは品物を市場に納めてひと仕事を終えると、仲間やアベックで食事を取りに行く。そのうちの1割、1日1200人が新鮮なおすしを楽しんでくれるのではないか。運転手さん向けのチラシも配りましたが、現実はさっぱり…。

なぜなのか。親しい運転手さんに聞いたところ、「築地の後に、横浜とか千葉とか大宮とか、ほかの市場もまわるように言われている。朝のラッシュ前に一刻も早く、東京を出ないと次に間に合わない。彼女とゆっくりすしを食べている時代じゃないんだよ」。アテが外れ、途方に暮れてしまいました。


《救ってくれたのは意外な人たちだった》


24時間営業のキーとなる深夜から早朝をどうするのか。オープン直後から、想定外の難問に直面してしまいました。トラックの運転手さん以外で、果たしてどんな人がこの時間帯にお店に来てくれるのか。答えは皆目わかりません。すがるような思いで電話をかけました。相手はお世話になっていた銀座の高級クラブのママ3人。「24時間やっているおすし屋さんをオープンしたので、アフター(閉店後のお客さんと同伴)で来てもらえませんか」。少人数でも来てほしいとの一心でした。

その日の深夜、律義なママがお客さんを連れて4人で来てくれました。ひと安心したところ、翌日は別のママがお店の女性とお客さんで8人、さらに翌日には別のママが16人…。ママたちの意地もあったのでしょうか、銀座からのお客さんが徐々に増えていきました。その後、アフターでお客さんと手軽でおいしいおすしを食べることが銀座で広がっていったようです。

1号店は40席しかなく、行列です。夜中の3時ごろ、都心のど真ん中の築地の一角で、着物姿のきれいな女性たちと立派な男性たちがすし店の前に並んでいる。この光景は何なのだ、と新聞やテレビ、雑誌などで取り上げてくれた。そうなると一般のお客さんも足を運んでくれるように。魚の聖地である築地で深夜、安くて新鮮なおすしを食べられる。やがて都心だけでなく、水戸や名古屋などから夜中、車を飛ばして来てくれる。外国人向けのガイドブックにも掲載されたようで、深夜から早朝にかけ、成田空港からトランジットの間に来てくれる外国人の姿も増えていきました。

今振り返ると、あのとき3人に電話をしていなかったら、24時間営業はなかったと思います。運ですよね。もうやめちゃったママもいるけど、恩を返すため、銀座で飲むときは3人と独立したチーママたちのお店には必ず寄るようにしています。(聞き手 大野正利)

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