熱海土石流で自宅解体の市議、脳裏に犠牲者の表情… 被災1年、消えぬ自責の念

産経ニュース
土石流から1年。黙禱をささげる「丸越酒店」店主で熱海市議の高橋幸雄さん(中央)=3日、静岡県熱海市の伊豆山神社(岡田浩明撮影)
土石流から1年。黙禱をささげる「丸越酒店」店主で熱海市議の高橋幸雄さん(中央)=3日、静岡県熱海市の伊豆山神社(岡田浩明撮影)

大規模土石流が、静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区の日常を奪った「7・3」から丸1年。「丸越酒店」店主で熱海市議の高橋幸雄さん(66)には、忘れられない光景がある。

着の身着のまま避難

あの日の午前10時20分ごろ、自宅兼店舗のそばを流れる逢初川(あいぞめがわ)の異変で外に飛び出し、近所の太田幸義さん=当時(64)=らと様子を見守っていた。濁流が次第に勢いを増し「危ない。早く逃げた方がいいぞ」。太田さんらに避難を促し、家族とともに着の身着のままで逃げた。

直後、上流から「黒い塊が見えた」。バキバキという轟音(ごうおん)とともに、猛烈な速さで赤茶色の酒店に直撃した。その瞬間の動画はSNSなどで拡散され、すさまじい被害を広く伝えた。

SNSで被災の様子が拡散し象徴的建物となった、熱海市議の高橋幸雄さんが店主の「丸越酒店」解体作業。現在は更地になっている=6月21日
SNSで被災の様子が拡散し象徴的建物となった、熱海市議の高橋幸雄さんが店主の「丸越酒店」解体作業。現在は更地になっている=6月21日

太田さんは高齢の母、佐江子さん=当時(93)=と同居する自宅にいったん戻っていた。黒い塊は容赦なく襲い、親子はともに命を落とした。

「なんとかできなかったのか」。無念さを抱えながら臨んだ昨年の9月市議会で、復旧・復興について触れた質問の途中、当時の太田さんの表情が浮かび、言葉に詰まった。

「もっと厳しく指摘していれば」

忸怩(じくじ)たる思いも消えない。市議として盛り土の存在を知っていたのではないか-。自身も被災者だがこの1年間、周囲からこんな指摘を受けることもあった。

過去に上流部から土砂が流れるなどし、市側に「しっかり対処しているのか」と繰り返し問うたが「指導しています」という反応だった。

「そもそも不適切な盛り土の存在を知らなかった。把握していれば自宅の上流にあるだけに、何もしないはずがない」「措置命令見送りさえも知らされていない」と振り返る高橋さんはこう続けた。「結局、市側の言葉を信じるしかなかった。もっと厳しく指摘していればとの思いはある」

SNSで広まり、被災地の象徴的な建物だった丸越酒店は6月下旬、解体された。築36年。4歳だった昭和34年から伊豆山で暮らし、2人の子供を育てた。毎年正月、親族ら約30人が集まる恒例の新年会で盛り上がり、市議への〝出馬表明〟も酒宴で明かした思い出の詰まった建物だ。

「実家を失い、さびしいが、これから河川拡幅や道路整備が始まる。復興を進めていきたい」。市伊豆山復興計画検討委員会の委員長を務めている高橋さんは、自責の念を胸に、静かに語った。(岡田浩明)

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