立川らく兵の浮世日記

夏の落語「青菜」から巡らす暑さ対策

産経ニュース
立川らく兵
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「植木屋さん、ご精が出ますなぁ」

こんなセリフで始まる古典落語があります。夏場を代表する演目「青菜」です。植木屋さんに庭の手入れをお願いしたお屋敷の旦那の言葉。たばこを吸いながらひと息入れている植木屋さんをねぎらったんですね。

今も昔も夏場に炎天下で働いている方々には頭が下がります。道路工事の作業員さん、自転車整理のおじさん、農家の方々、ティッシュ配りの青年、秋葉原の呼び込みのメイドさん。

お屋敷の旦那は植木屋さんに「柳陰(やなぎかげ)」なる飲み物をすすめます。焼酎をみりんで割ったお酒です。その時代のことですから井戸水で冷やして飲んだんだそうですよ。関東では「直し」とも呼ばれました。

今の世なら「とりあえずビール」。これが1日の疲れを癒すための合言葉です。グイッと体に流し込んで火照りを静める。でも江戸や明治の時代では、そこまでキンキンに冷えた飲み物は出てきません。井戸水と同じ温度の「柳陰」も重宝がられたことでしょう。

植木屋さんはそれから「鯉の洗い」をすすめられます。下に氷が敷いてあるから冷たく、身も締まっている。思わず氷をかじる植木屋さん。「この氷は冷えてますなあ」。日本で天然氷の販売業が始まったのは明治初年だそうです。機械製氷の誕生はそれから10年ほどあと。植木屋さんにとっては氷の冷たさ自体が珍しかったんでしょう。

旦那が最後にすすめてきたのが「菜のおひたし」。ホウレンソウか、コマツナか。ミズナ、シュンギク、チンゲンサイ。いずれにしても夏場の酒にはもってこいのサッパリした食べ物です。旦那が奥さまにおひたしを持ってくるよう頼むと、ないと言う。

またお客さまである植木屋さんの前で「ありません」というのは亭主に恥をかかせることになる。そこで隠し言葉を使います。奥さまが「鞍馬から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官」と言うと、旦那が「義経にしておきな」と答える。九郎(食らう、食べた)と義経(よしにしておきな)で受け答えしたんですね。

その種明かしを旦那から聞いた植木屋さん。いまのやり取りが、いかにも粋で涼しげに見えたんでしょう。長屋に帰ってこれをマネしようとする。そして大変な目に遭ってしまう。植木屋さんとしては仕事を頑張りすぎて、今でいうところの熱中症ぎみだったのかもしれません。暑さ対策も今より難しかったことでしょう。せいぜいウチワでバタバタやるくらいのもんです。

今年は観測史上最速の梅雨明けとやらで、さっそく真夏がやって参りました。おまけに「節電ポイント」という言葉も一躍有名になるほど、電力供給が逼迫(ひっぱく)しているそうで。まずは電力消費を抑えるために、日本中をあおぐ巨大ウチワの開発が望まれますね。その装置の開発と稼働のためにも、さらなる電力の確保が必要になり、つまりは…。いかん、頭を冷やそう。

立川らく兵 宮崎県出身。平成18年8月、立川志らくに入門。24年4月、二ツ目昇進。

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