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栃木発 LRT開業、2度目の延期 渋滞、人出不足〝誤算〟続き

産経ニュース
LRT「ライトライン」路線図
LRT「ライトライン」路線図

栃木県で宇都宮市と芳賀町が進める次世代型路面電車(LRT)の全線開業が、来年3月の予定から数カ月延期される見通しとなった。市は「工事の遅れが原因」と説明するが、延期は2度目。日本で初めて、既存路線の改良や延伸でなく「ゼロからの新設計画」として注目されるLRTに何が起きているのか。

工事3カ月遅れ

「多くの市民が心待ちにしていたと思う。心からおわびする」。宇都宮市の佐藤栄一市長は6月3日、市議会に計画の遅れを説明し陳謝した。

工事が遅れている「野高谷町交差点」。県道をまたぎ、手前と左奥の間に架橋する=6月22日、宇都宮市ゆいの杜(山沢義徳撮影)
工事が遅れている「野高谷町交差点」。県道をまたぎ、手前と左奥の間に架橋する=6月22日、宇都宮市ゆいの杜(山沢義徳撮影)

遅れているのは、国道408号バイパス方向から県道をまたぐ「野高谷(のごや)町交差点」の立体交差工事。新興住宅地や複数の工業団地が近く、交通量が多い。車線規制で激しい渋滞が起きたため規制区間を短くした結果、各種工事を同時並行で行えなくなった。

交通量が減る夜間の工事で遅れを取り戻す手も検討されたが「鉄筋や型枠など、熟練作業員の不足が壁になった」(市LRT整備課)。工事は3カ月遅れ、年内の予定だった試運転は来年にずれ込む見込みとなった。

30年越しの計画

LRT計画の起源は、昭和60年代にさかのぼる。鬼怒川を渡る橋がボトルネックとなり、宇都宮市東部で道路渋滞が深刻化。対策を検討した市と県は、LRT整備の基本方針を平成12年に決定した。

当時は、先進地の欧州をモデルに既存鉄道へ乗り入れる案や、県央部の交通網として発展させる構想も浮上。国が「コンパクトシティ」を提唱し、18年に富山市で既存路線を改良したLRTが開業したことが追い風となった。

一方、建設費や採算性、バス路線との共存をめぐって〝県都の政治的争点〟でもあり続けた。知事選や市長選で推進派と反対派の対決が繰り返され、住民投票の実施を求める運動も展開された。

だが、議会や商工団体の多くは市街地活性化への期待から計画を支持し、バス会社もLRT運営会社に出資する姿勢へと変化。28年に国土交通相の計画認定へこぎつけ、30年5月にはJR宇都宮駅東口から工事がスタートした。

コロナ禍も影響

当初は今年3月開業予定だったが、昨年1月に1年延期が明らかとなった。新型コロナウイルス禍で用地取得交渉が遅れ、一部区間では軟弱地盤を強化する必要が判明。総事業費は見込みより226億円多い684億円に膨らんだ。

誤算は今回で2度目。ただ契約上、工事費の追加負担は発生しないという。議会には「部分開業できないか」と求める声があり、今後は野高谷町交差点より西側の暫定開業の可否が焦点となる。

市によると、清原工業団地内の「グリーンスタジアム前停留場」にはサッカー試合開催時の折り返し運転を想定した渡り線を設けているため、ハード面では対応可能だ。佐藤市長は「状況を精査し、いつ開業できるか、なるべく早く説明したい」と話す。

JR宇都宮駅東口では、国際会議や見本市を催せる複合施設、商業施設などを建設する再開発が大詰めを迎えている。街開きは今年11月。なるべく間を置かずに暫定開業するのか、満を持して全線開業を選ぶのか、注目される。

宇都宮ライトレール】 LRTの運行会社。平成27年に第三セクター方式で設立された。路線延長14.6キロ、停留場19カ所。運転士45人を採用し、路面電車を運行する広島電鉄など8社へ派遣して技術を習得させている。車両は新潟トランシス製、1編成3連接の低床形で定員は国内最多の160人。計17編成を導入した。黄色と黒のツートンカラーで、愛称は宇都宮の別称〝雷都〟にちなんだ「ライトライン」に公募で決まった。

記者の独り言】 宇都宮へ赴任したのは令和元年5月。開業に立ち会うのが楽しみだったが、自分の異動の方が早いかも。今年40周年の東北新幹線が当初は大宮発着だったように、暫定開業も一手だろう。だがそれよりも期待するのはJR宇都宮駅西側へ、東武宇都宮駅前を経て、観光地である大谷方面への延伸だ。鉄道はネットワーク化されてこそ力を発揮する。以前に勤務した広島や大阪のように、市民から愛される路面電車になってほしい。(山沢義徳)

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