科学技術立国を目指し政府がこのほど取りまとめた「統合イノベーション戦略2022」に、女性研究者育成・支援が盛り込まれた。民間企業を含む日本の全研究者に占める女性の割合(令和2年度)は、わずか17・5%。世界の事業所でいち早く男女同一賃金を実現し、科学や技術など理数系業務を担う女性の割合が37・4%(昨年末時点)に上る米たばこ大手、フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)で国際的な研究に携わるアンヘラ・ヴァン・デル・パラス氏に、女性研究者の現状や課題を聞いた。
科学的な研究に資金を出す恵まれた環境
パラス氏はペルーで医学を学び、オランダで疫学と生物統計学の博士号を取得。現在は、PMIで世界の医療データの解析や疫学研究に従事する。「好奇心が強い子供だった。大学時代に、データを分析することで病気のリスクを探ったり、どう予防するかを考えたりする疫学研究の楽しさを知り、一生やっていきたいと思った」と振り返る。
ただ、パラス氏が所属するのは、学術機関ではなくたばこメーカー。たばこによる健康影響の調査や、健康被害の少ない商品の開発につながる研究が主だ。最近では加熱式たばこへの切り替えが進む日本で、喫煙に起因する疾患の入院率が減っていることを明らかにした。「利益相反の問題から、論文発表や学会、シンポジウムの出席が難しいこともある。でも産学連携による共同研究はでき、会社も科学的な研究に資金を出す恵まれた環境だ」と企業に所属する研究者としてのやりがいを語る。
研究者の44%が女性
パラス氏が働くスイスの研究開発拠点では、ライフサイエンス・製品分野の研究者のうち44%が女性。現場では性別を意識しないことも多いが、同じ女性として女性が長く研究を続ける難しさも理解する。女性研究者を増やす方策として、「人生の優先順位や能力は人によって違う。研究においても、柔軟な働き方に対応することが大事だ」とアドバイスした。