記録映画の管理・保存などに注力してきた「国立映画アーカイブ」は1日、大正12年(1923年)の関東大震災で被災し、現在は東京復興のシンボルとして知られる「三井本館」(東京都中央区)の被災時の映像などを特設WEBページで初公開した。
爪痕の凄まじさ
国立映画アーカイブ特定研究員、とちぎあきらさんは「来年は関東大震災から100年を迎える。大きな地震が国内で頻発する昨今の現状を踏まえ、映像を通して国民に備えを促したい」と話す。
映像のタイトルは「帝都大震災 大正十二年九月一日」。国立映画アーカイブなどが関東大震災100年に合わせて制作したWEB サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」( https://kantodaishinsai.filmarchives.jp/ )で公開されている。
本作は桜映画社から寄贈を受け、国立映画アーカイブ内で保管されていた当時のニュース映像を編集したもので、31分間のフィルムは震災の爪痕の凄まじさを伝えている。中でも印象的なのは、延焼により鉄骨がむき出しとなった三井本館の屋上だ。
また、延焼により損壊した三井本館の正面や側面、建物内部、瓦礫を片付ける作業員の姿も映し出されており、焦土同然となった当時の被災状況の過酷さが分かる。
このほか、三井が東京市(当時)に寄贈し、日比谷公園と上野不忍池畔に建設されたバラックや被災者の様子も紹介されている。
大震災への畏怖を想起
国立映画アーカイブでは、関東大震災発生から100年にあたる来年 9 月 1 日までに、所蔵する関東大震災関連のすべての映画フィルムの公開を目指してきた。とちぎさんは「閲覧者に感想を伺うと、なぜ99年も前の映像が残っているのかという驚きや関東大震災への畏怖の念があるようだ。日本人の関東大震災への関心は高く、風化していない」と指摘する。
WEB サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」のPV(ページビュー)がとちぎさんの言葉を裏付ける。昨年9月1日のサイト公開以降、PVは累計72万1713(6月29日時点)を記録。1日あたりでは100~300で推移してきたが、3月16日に宮城・福島県で震度6強の地震、6月19日に石川県で震度6弱の地震が発生すると、1日のPVは記録のあるもので、前者は749(3月19日)、後者は557(6月25日)と跳ね上がった。
とちぎさんは「自分なりに何か教訓を見つけてほしい。映像を公開すれば地震への一層の注意喚起にもつながる」と映像の力に期待を込めている。(高橋天地)