話の肖像画

落語家・桂宮治(25)私の至高噺「上燗屋」ここで披露

産経ニュース
真打昇進披露興行初日、東京・新宿末廣亭で =令和3年2月11日
真打昇進披露興行初日、東京・新宿末廣亭で =令和3年2月11日

(24)に戻る

《真打昇進披露興行は東京・新宿末廣亭が大初日。寒空の下、新宿の繁華街で行列する客に携帯カイロを自ら配る心遣いを見せた。満員札止めの船出。トリネタはあの「上燗屋(じょうかんや)」だ》


「ここしかない」と。中途半端なところでやるのは違うな。初っぱなだなと。「一番初めの高座はしっかりした長い話でやろう」という考えは、僕にはない。「漫談風かな」と思っていました。

満員のお客さまによく笑っていただいたんですが、その最中でも「こんなんじゃないんだよね」という思いがよぎるんです。桂枝雀師匠の名演が頭から離れない。これたぶん、永遠にそうなんでしょうね。

普通の落語を稽古してしゃべっているのとは違う感覚です。自分を見つめ直すというか。「おれって駄目だな」っていうことをやりながら認識させられる。枝雀師匠が大き過ぎるんですね。


《14年前、YouTubeで見た桂枝雀の「上燗屋」。「こんなに人を幸せにできる人がいるんだ」と、落語の道へ進むことを決めた。それをいま、自分の真打昇進披露興行の高座でかけている》


上燗屋は最初のころはやらなかったんです。できないと思っていました。「これに手を出すのはまだ…」と遠巻きに見ていた感じです。数年前、「やっぱり一回やってみたい」とようやく思えるようになりました。そして真打ち昇進が近づくと、「もっと先にいってからやろうと思ってもできないぞ」と気付き、枝雀師匠の系譜の上方の先輩にお願いして稽古をつけてもらいました。

でも、どうしても頭の中に枝雀師匠が出てきてしまうんです。まねをするのは、大阪の枝雀門下の方々がやることだから、僕はそのまんまコピーすることはできない。コピーしたものを崩すのでもない。枝雀師匠を頭から抜こう抜こうとするんですが、あまりにも思い入れが強くて、どうしてもそっちにいっちゃう。

「あー、ダメだ。どうしても枝雀師匠のまねをしようとしている。しかも、枝雀師匠より全然面白くない」

当たり前なんですけどね。やればやるほど、自分が面白くない。やればやるほどつらくなる。枝雀師匠と比較しちゃうんです。王貞治、長嶋茂雄がホームランを打っている姿をイメージしながら草野球をしているみたいな。どうやったって勝てっこない。

「上燗屋」を初めて高座でやったのは、西荻窪の「宮治展」じゃないかな。ネタおろしに必死な時期でした。「違うなあ、違うなあ」と思いながらやりました。

「うわー、枝雀師匠ならもっとウケてるわ。全然違うわ。なんだこれ」

何度やっても、やるたびにこう思いながらやっている。だから、ここぞというときしか切れないカードです。


《これまでに覚えた噺(はなし)の数は150を超える。主に古典落語だが、やはり「上燗屋」が一番好きだという》


落語って数が多いですけど、そのすべてで聞くたびにいろんな思いが湧き上がってきます。そのときの自分の気持ちとか状況によって感じ方が変わってくるんです。

噺家としても、やればやるほど、表現者として伝えたいことが出てきて、話の持っていき方やセリフが変わったりする。落語って奥が深いですね。だから、この話が最高、この話はダメっていうのはないですね。すべての落語が好きです。

ただ、記事にしても何にも面白くないでしょうけど、「上燗屋」が一番好きな噺です。自分を落語に引き合わせてくれた、僕にとっては最も重要な噺。この噺がなかったら、僕は落語家になっていなかった。だから、その話が一番になってしまうのは仕方ないですよね。(聞き手 池田証志)

(26)にすすむ

  1. 値上げしてもよいと思うもの 3位「おむつ」、2位「ビール」、圧倒的1位は?

  2. 中露〝蜜月崩壊〟習主席がプーチン氏見捨てた!? 「ロシアの敗北は時間の問題」中国元大使が発言 インドの浮上で変わる世界の勢力図

  3. 市から突然1300万円請求…なぜ? 年金生活の80代女性に 専門家「今後数年で同様の高額請求を受ける人は増える」

  4. 内田理央のおっぱい写真にファン大興奮「一瞬ビビった」「萌え死んだ」

  5. 長谷川京子が安藤政信と6時間ほぼ裸でシャワー室に… 「反響が楽しみ」