高野山のふもとに「ニュー・シネマ・パラダイス」 旧校舎 住民らが改修

産経ニュース
「フキシネマパラダイス」のオープニングイベントで上演された人形劇=和歌山県高野町
「フキシネマパラダイス」のオープニングイベントで上演された人形劇=和歌山県高野町

標高約600メートルの山間地にある和歌山県高野町富貴(ふき)地区に4月下旬、地域住民らが協力してかつて小学校校舎だった倉庫を改修し、地域の交流拠点となる多目的ホールをオープンさせた。名称は往年の名作映画にちなみ「フキシネマパラダイス」。原則毎月、映画上映会や音楽コンサートなど、地域活性化イベントを開催し、魅力を発信していく計画だ。

過疎・高齢化

高野山につながる宿場町として栄えたという富貴地区。もともと林業なども盛んで、町によると、昭和40年ごろ、同地区には近隣地域を含め約2500人が住んでいた。しかし、林業の衰退とともに人口も減少。現在、同地区の住民は約380人で、65歳以上の高齢化率は70・08%。過疎化と高齢化が同時に進む中山間地域だ。

同地区で生まれ育ち、飲食店「やきもちカフェ」を営む上辻孝一さん(75)と妻の淑子さん(76)は約2年前「昔の映画館のような施設をつくり、地域を活性化したい」と思い立ち、交流拠点づくりを計画。元小学校校舎でその後、個人所有の倉庫となったものの放置されていた建物を活用しようと打診し、無償で借り受けることになった。

2人はイタリアを舞台にした映画「ニュー・シネマ・パラダイス」のファン。計画を思い立つきっかけにもなった。

改修される前の旧倉庫(フキシネマパラダイス提供)
4月23日にオープンした多目的ホール「フキシネマパラダイス」=和歌山県高野町

木造平屋建て約200平方メートルの倉庫の改修は、住民ら約30人で実施。主に間伐材を利用し、他の材料は費用を出し合って調達した。床や壁、扉、窓などは手作業で仕上げ、いすなどの寄付も受けるなど、住民たちが作り上げた施設となった。

作業には、昨年春に同県橋本市から家族4人で移住した会社員、大谷剛志さん(38)ら県内外から移住してきた5世帯も参画。この5世帯が運営団体をつくり、施設運営を担っている。

屋根は晴れた日に映える青色とし、天井の梁はむき出しのまま、レトロな雰囲気を残した。施設には映画上映イベントで使える映写台があり、定期的に図書館としても開放するため小説や絵本など約500冊の蔵書も備えている。

運営団体の代表となった大谷さんは「移住して(地域住民に)親切にしていただいているので、何か恩返しがしたかった」と語る。

イベント盛況

4月のオープニングイベントには、地区内外から約200人が参加。子供らの歌の披露や人形劇の上演などが行われ、「ニュー・シネマ・パラダイス」も上映された。

地区出身で現在は橋本市に住む男性(61)は「地区にはお彼岸などで年に5回帰ってくる程度。こんなに活気があるとは。やはり子供たちの声が聞こえるのはいいですね」と盛況ぶりを喜んだ。

大谷さんも「自主性を持ってやりたいことができる現場をつくりたかった。本当にやってよかった」と満足そうに話した。

5月下旬にも和太鼓の指導者が講師になったワークショップが開かれ、約100人が参加。太鼓のたたき方などを練習した後、最後は実演が披露された。

今後も原則毎月、交流イベントを開いていく。内容は異なるが、音楽コンサート、盆踊りなどを計画。映画上映も検討しており、内容が決まれば順次、フキシネマパラダイスのホームページなどで告知していく。

大谷さんは「なによりも継続していくことが大事。富貴地区にはポテンシャルがあると思うので、僕らの世代で高めていければ」と今後の活性化に期待している。

全国で広がる

古くなり使われなくなった建物などを改修し、地域活性化の拠点として再生させる試みは全国各地で増えている。

京都市北区では、平成11年に廃業した築80年の銭湯がカフェに改修され、翌年に有志らが「さらさ西陣」としてオープンした。

宮崎駿監督のアニメ映画「千(せん)と千尋(ちひろ)の神隠し」に登場する建物のような唐破風の屋根をもち、高い天井、全面タイル張りのアンティークな店内が観光客らの人気を集めている。武道雅士副店長は「建築ファンや研究者も訪れる。外観や店内を撮影し、ぐるりと眺めているお客さまも多い」と話す。

兵庫県丹波篠山市の丸山地区では、地元住民らでつくるNPO法人「集落丸山」が、集落内の空き家2棟を改修し、宿泊用として一棟貸しするサービスを展開している。

江戸時代末期に建てられた古民家の雰囲気が好評といい、担当者は「都市部からの宿泊者が多い。集落全体でのおもてなしが喜んでいただけているのでは」と話している。

全国各地で古民家を改修し、ホテル事業などを展開するNOTE(同市)によると、1990年代ごろから各地で「保存・維持」を目的に古民家などを再利用する動きが高まり、約10年前から個人が「長期的な活用」に向けて開発する動きも活発になっているという。

藤原岳史社長は「数年前までは、古民家再生はブームのようになっていたが、今では事業としての位置付けを獲得してきている」と分析。「そうした動きが、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の普及で、より国内に定着していくのでは」と話す。(山田淳史)

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