新型コロナウイルス禍で浸透した在宅勤務が、企業の経営者や管理職の悩みの種になっている。従業員らに職場へと出社してもらい、対面で意思疎通しながら効率的に業務を進めたいのが本音だが、慣れた在宅勤務から抜け出せない従業員が少なくないためだ。
米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)の5月中旬の報道では、ニューヨーク市マンハッタンの160社のうち、週5日の出社態勢に戻した企業は8%にとどまった。首都ワシントンで知人らに話を聞いても、週2、3日の出社を最近求められるようになったばかりだというケースが多い。
雇用の流動性が高いとされる米国では、人手不足が一層深刻化している。
IT業界では「出社を無理強いすれば従業員が辞めかねない」との話を聞くなど、在宅勤務の活用に消極的な企業は「魅力に乏しい」と映るようだ。
社員の職場復帰を促そうと、経営者や管理職も、あの手この手を駆使している。職場で無料の朝食や昼食を出したり、映画観賞会などの従業員らが楽しめるイベントを開いたりして、出社への動機づけを図る事例が増えているそうだ。
もっとも、出社した従業員たちが「食事した後、自宅に帰っていった」との笑い話もある。新型コロナ禍は職場の風景を変えてしまった。(塩原永久)