スルガ銀行(本店・静岡県沼津市)のシェアハウス向け不正融資問題を巡り、懲戒解雇された元営業本部長の麻生治雄氏(60)が同行に地位確認や未払い賃金の支払いなどを求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。三木素子裁判長は、解雇理由とされた行為を認定できる証拠がなく「解雇処分は無効」とし、同行に未払い賃金1600万円の支払いを命じた。地位確認請求については麻生氏が令和3年7月に定年を迎えたため棄却した。
麻生氏は平成30年11月、「審査部門に圧力を加えて融資審査を形骸化させた」などとして同行から解雇されていた。
判決理由で三木裁判長は、営業本部長だった麻生氏と融資をチェックする審査部が対立することは「当然に想定される」と指摘。麻生氏の要求に問題があっても審査担当者が是正すべきだった、とした。
また、麻生氏が副社長の指示に反して不正融資を推進したりしたとする同行の解雇理由についても「事実を認めるに足りる証拠はない」と結論づけた。
30年9月に公表された第三者委員会の報告書は、審査担当者が融資書類が偽装された疑いを指摘しても麻生氏が強圧的な姿勢で意見を押し通し、融資が実行されたケースが大半だったとしていた。
この日の判決後、東京都内で会見した麻生氏は「事実が曲げられ、(不正融資問題の)スケープゴートにされた。判決は当然で、事実をきちんと伝えられたことがうれしい」と語った。
麻生氏は旧経営陣らとともに不正融資問題で多額の損失を招いたとして、同行から総額35億円の損害賠償請求訴訟を起こされており、静岡地裁で係争中。
スルガ銀行は「判決の内容を精査して今後の対応を検討する」とのコメントを出した。