「ボクサー人生をかけて世界戦に挑戦する」。ボクシングの世界ボクシング機構(WBO)アジアパシフィックミドル級王者で、国内の男子プロボクサーで史上最年長王者の野中悠樹選手(44)=兵庫県尼崎市=が、クラウドファンディング(CF)を行っている。悲願の世界戦のためには海外選手らと試合を重ねたいところだが、マッチメークの資金繰りが苦しいのが実情で、目標額は6月末までに300万円。「皆さまの思いを胸に世界王者までたどり着いてみせる。一緒に戦ってください」と支援を呼び掛ける。(鈴木源也)
182センチの長身でサウスポーの野中選手。長いリーチを生かしたキレのあるジャブが持ち味だ。19歳のころ、バイク事故で生死をさまようほどのけがをし、「生きているうちに懸命に何かに取り組みたい」と、腕にギプスをはめたまま尼崎市のジムの扉をたたいたのがボクサー人生の始まりだった。
ミドル級(69・85超~72・57キロ)は国際ボクシング連盟(IBF)王者のゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)がいるなど、世界で最も層が厚い階級といわれる。そのなかで、野中選手はWBOアジアパシフィックミドル級王者や東洋太平洋ボクシング連盟(OPBF)ミドル級王者など5つの王座を獲得してきた。
「40代も後半に近づいているが、年齢による衰えは感じない。まだまだ戦える体です」。活動拠点を置く大阪市西成区の「渥美ボクシングジム」でのスパーリングでは、フェイントや相手の死角を突いたパンチを繰り出すなど、長いキャリアで培った数々の技術で若手ボクサーを圧倒していく。「いつでも世界戦のリングに立てるよう常に最高の状態を心掛けている」と大粒の汗を拭う。
野中選手は現在、WBO世界ミドル級15位。世界王者に挑戦できる可能性もあるが、より実現に近づくには海外の世界ランク上位者との対戦を重ねる必要もある。しかし、年齢などが影響し大口のスポンサーを確保するのは難しく、資金面が課題となっていた。
そこで5月からクラウドファンディングを開始。今月20日時点で84人から約165万円が寄せられている。返礼品にはサイン入りの色紙やオリジナルパーカのほか、試合時のトランクスとガウンにスポンサー広告の掲載などができる権利もある。野中選手は「『夢は諦めなければかなう、努力すればいつか報われる』ということを証明して、夢と勇気を日本に届けたい」と力を込めた。