アニメ第1期放送から10年の節目を迎える人気作「ソードアート・オンライン」(SAO)をテーマにした展覧会「ジ・アート・オブ・ソードアート・オンライン」(アニプレックス、産経新聞社主催)が7月2日、東京都台東区の上野の森美術館で開幕する。平成後期から現在を代表するポップカルチャー作品として多くの若者から支持され、世界でも人気の高いSAO。10年間の軌跡を振り返る展示からは、アニメの最先端をゆく作り手たちの熱量が伝わる。
アニメの最先端
SAOの舞台は、特殊なVR(仮想現実)装置を使うことで現実さながらのファンタジー世界を体験できるオンラインゲーム「ソードアート・オンライン」。その世界にとらわれた主人公の少年、桐ケ谷和人(キリト)が仲間とゲームの攻略を目指す物語だ。原作は作家の川原礫(れき)さんが手掛けるライトノベル。平成24年から令和2年にかけ4シリーズがテレビアニメ化された。
「今年はアニメ化から10年の節目の年。クリエーターの皆さんの手で、作品がどういう思いで作り上げられているのかをぜひ知ってほしい」
アニメの企画や製作を行うアニプレックスの丹羽(にわ)将己プロデューサーは、同展開催の狙いをこう語る。
SAOの世界を彩る魅力の一つが作画の美しさだ。剣と魔法の世界で躍動するキャラクターに加え、ゲーム内に登場する幻想的な自然や建築物の美しさ、VRやAR(拡張現実)、AI(人工知能)などのデジタルテクノロジーをイメージした近未来的な描写…。アニメの最先端をゆく多彩な映像表現に目を奪われる。
同展では300点以上の原画をはじめとする制作資料から、作品を織りなす世界観やキャラクターデザインなどが誕生した経緯をひもとく。初公開の資料や描き下ろしイラストも展示。大型連続パネルで名シーンを再現した「等身大アートワーク」もあり、同作の世界観に「没入」できる。
同社の展覧会担当者、柿山大秋さんは「線の一本一本からキャラクターの力強い動きや躍動感が伝わる。制作資料から作り手の〝魂〟を感じ取っていただきたい」と見どころを語る。
人間ドラマが魅力
SAOの世界では、ゲーム内の死が現実社会での死に直結してしまう。このシビアな世界観の中で圧倒的な強さを発揮するのが、主人公のキリトだ。丹羽さんは、若い視聴者が憧れるヒーロー像を体現したキリトと、ヒロインの結城(ゆうき)明日奈(アスナ)の2人が牽引(けんいん)する「人間ドラマ」こそが最大の魅力だと語る。
「ヒーローのキリトと、守られるだけではなくキリトと肩を並べる格好いいヒロインであるアスナ。この魅力的な2人が物語を引っ張っている。根底にあるのは、年代や国籍を問わず楽しめる普遍的な人間ドラマ。そこにVRやARなどの未来的な要素やゲーム的な面白さが組み合わさり、独自の世界観を形作っていると思う」
原作小説はアジア、欧米などでも人気があり、全世界でシリーズ累計発行部数3千万部を記録する大ヒット作に成長した。アニメ放送開始10周年を迎える今年は、新作映画「劇場版SAO プログレッシブ 冥(くら)き夕闇のスケルツォ」が9月に公開予定だ。
丹羽さんは「今のアニメは、クリエーターの方々が非常に細かいところにまで熱量を込めて作り上げている。SAOという作品の魅力を、多くの方々に体感していただければうれしい」と話している。(本間英士)
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7月24日まで。入場日時指定制。一般当日2200円。