話の肖像画

落語家・桂宮治(21) 今の私は、かみさんのおかげ

産経ニュース
結婚前、交際していたころ(本人提供)
結婚前、交際していたころ(本人提供)

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《落語界での目の覚めるような躍進を支えたのが糟糠(そうこう)の妻、明日香さん(47)だ。出会いは芝居だった》


僕は俳優養成所を出たばかりで、かみさんは当時、事務所に入っていてよく商業演劇に出ていました。初めて会ったのは20歳くらいのころだったかな。「しっかりした芝居をやりたいな」と思って、小劇場に参加したときでした。

最初は共演者であり、ただの友達でした。1カ月半くらい稽古して、1週間くらい公演をやって、また何カ月か会わない。そのときだけ会う人でした。芝居を何回か一緒にやって、5年くらいたっていたのかなあ。ある公演で会う機会があって、遊びに行っているうちに、友達から友達以上になって、気づいたらつき合っていました。かみさんは夜の仕事をしていたので、仕事終わりに会って夜中に食事をしに行ったりしていました。


《運命の出会いを果たした2人。思わぬ出来事が後押しする》


母親がやっていた定食屋がうまくいかなくなって借金がかさんで、狭い家に引っ越したいっていうから「じゃあ、俺、家を出ないとな」と。でもそのころ、僕もめちゃくちゃ借金があった。消費者金融を3、4社使っていて、いつも利子しか返していなかった。「やばい。ちょっとこれ、引っ越しってどうやるんだ」って、かみさんに相談したら「私もそろそろ実家を出ようと思っていたから一緒に暮らそうよ」と。事実上、僕がお願いしたようなもんですね。

かみさんは貯金がちゃんとできる人だったので、僕の状況を聞いたらとても驚いていました。欲しいものがあったら買っていたし、高い店で食事とかしてたんで。「まあ、いいや分かった」。かみさんは僕を見捨てることなく、同棲(どうせい)することになりました。


《それから現在まで、東京・戸越銀座界隈(かいわい)に住み続けている》


アパートの敷金、礼金、冷蔵庫とかベッドとかの家財道具も全部、かみさんに出してもらいました。さすがに申し訳ない。そこで、給料が振り込まれる銀行口座の通帳、はんこ、消費者金融のカード、暗証番号…と結婚してないのに自分のものすべてをかみさんに預けました。

プロポーズはしたかな。いや、していないはず。「俺、プロポーズとかしていないよね」という話をしたのを覚えていますから。「まあいっか。とりあえず、結婚しようか」となって、結婚式の話を始めました。そのころには、かみさんが借金を全部返してくれていました。

結婚した後、かみさんと一度だけ、お江戸上野広小路亭(東京・上野)で、二人会をやったことがあります。一番初めの勉強会(自主公演)。かみさんが琵琶、僕が落語をやって。バカみたいでしょ。地元の友達、芝居や仕事の仲間が来てくれて満員になりました。

「困った時期はある?」って、かみさんに聞いても「いや別に…」となると思う。前座のときも、ひもじい思いをしたことはない。暇じゃないから、お金を使うこともないし。家では弱音やグチを吐いていなかったんで、かみさんは僕が楽しそうに仕事をしに行ってると思っていたんじゃないでしょうか。まったくお金にはなっていなかったけど。

うまくやりくりしてくれていたんでしょう。「これ以上使うな」とか「買っちゃダメ」とか言われたことはないです。逆に、服でも「外に出る商売なんだから、いっぱい買っておいた方がいいよ」って。とにかく、否定されることがないんです。僕の一番の理解者であり、常に味方。強制したり規制したりすることは一切ない。一番、一緒に居やすい人です。だから、いつもすぐに家に帰りたくなるんですよね。(聞き手 池田証志)

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