【ノーサイドの精神】
6月19日、ラグビーの母国イングランドの聖地・トゥイッケナムで、イングランド-バーバリアンズが行われ、バーバリアンズが52-21で快勝した。
バーバリアンズとは、国際試合のため特別に編成される英国のクラブ。南半球の代表が来征するときなど、著名選手が集められる。必ず1人は地元のノンキャップ選手を加え、試合は両チームともオープン攻撃に徹するなどスペクタクルにすることが〝不文律〟。ストッキングは自らの所属クラブのものを履く。その姿が映像に映ることが、クラブにとっても名誉なのだ。
今回のバーバリアンズにはフランス代表経験者など、19人のフランス人選手が選ばれた。監督もフランス代表を指揮するファビアン・ガルティエ監督。メンバーは違っても、今春の欧州6カ国対抗を全勝で制した勢いは衰えていない。前半は競り合ったが、後半一気に突き放した。
計8トライを奪ってイングランドを撃破した試合後、監督は「この19人は日本に行くことになるだろう」と話した。その言葉通り、翌20日に発表された日本遠征メンバー42人に、この19人も名を連ねた。6カ国対抗優勝の主力は休養のため、ほとんど参加しない。FLシャルル・オリボン、WTBダミアン・プノーら2019年W杯経験者は6人と少ない。21歳以下の若い選手が8人。ジョセフ・ジャパンはいかに迎え撃つのだろう。
ところで、この試合での〝珍事〟が、前半37分のバーバリアンズLOウィル・スケルトンの退場。イングランドPRパトリック・シカリングの頭部に肩を当てる危険なタックルでレッドカードを出されたもので、オーストラリア代表キャップ19を持つ203センチの30歳が、バーバリアンズが1890年に初めて試合を行ってから133年目にして史上初の退場者となる不名誉に浴してしまった。
また、日本のパナソニックでも活躍した元イングランド代表LOジョージ・クルーズは、バーバリアンズの背番号4を背負ったこのゲームが引退試合。元同僚たちとの80分間を楽しみ、何とゴールキックを3本も決め、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。最後は地元ファンの盛大な拍手に送られ、キャリアを終えた。(田中浩)