すべての伏線が回収され、謎解きが腑に落ちる映画「バスカヴィル家の犬」が公開中だ。
世界的な探偵小説「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案としたフジテレビの月9ドラマ「シャーロック」(2019年10~12月放送)の劇場版である。
瀬戸内海の離島で起きた誘拐事件が物語のベースになっている。外界から隔離された世界、大富豪による隠しごと、一家の来歴を見つめてきた古めかしい洋館、心霊スポットになっている廃坑、古くから島に伝わる呪い…。どことなく横溝正史の世界観と重なるが、古くさい感じは一切ない。犯罪を構成する素材を調理する手法が謎解きゲームのように斬新で、見るものをひきつけ続けるからだ。
贅(ぜい)を尽くしたキャスティングも、映画を成功に導いている。
犯罪捜査コンサルタントの誉獅子雄(ほまれししお)をディーン・フジオカ、相棒を務める〝元〟医師の若宮潤一を岩田剛典が演じる。平たくいえば〝探偵バディー〟。誉が思案し、若宮にヒントや工夫を伝授し、謎のパズルに迫るが、2人はそれぞれに専門性を有している。クールな知能のぶつかり合いという思惑も描かれ、謎解きの深度が増し、知能ゲームの要素が加わる。