ロシア海軍の情報収集艦が5月から6月にかけて北海道を周回する形で航行していたことが20日、分かった。ロシア軍の動きとしては異例で、通信傍受などにより北海道、東北の自衛隊や米軍の動きを警戒・監視したとみられる。日米両国は先進7カ国(G7)の一員としてウクライナ侵攻を続けるロシアに経済制裁を科すなど圧力を強めており、ロシア側には日米を牽制(けんせい)する狙いもありそうだ。複数の政府関係者が明らかにした。
北海道を周回したのは、ロシア海軍のバルザム級情報収集艦1隻。5月18日に宗谷海峡を東に向けて通過し、北方領土や東北・三陸沖の海域を航行して引き返し、6月7日に宗谷海峡を西に向けて通過した。同艦はさらに南下し、9日に津軽海峡を東に向けて航行し、再び北海道を周回した上で12日に宗谷海峡を西進した。
情報収集艦は一定の速度で航行しておらず、複数のポイントでエンジンを切って活動。航空自衛隊千歳基地(北海道)や米空軍三沢基地(青森県)などの通信を傍受するとともに、レーダーの電子情報を収集していたとみられる。同艦に対する自衛隊と米軍の反応を探っていた可能性もある。
海上自衛隊は大湊警備隊(青森県)の多用途支援艦「すおう」、第1ミサイル艇隊(北海道)の「わかたか」が海上から情報収集に当たったほか、第2航空群(青森県)のP3C哨戒機も警戒・監視を行った。
日本周辺の海域では9日にロシア海軍の駆逐艦やフリゲート艦が北海道東方の太平洋上で確認されており、同艦隊は千葉県・犬吠埼沖、東京都・伊豆諸島を経て19日には沖縄本島と宮古島の間の海域を抜けて東シナ海へ入った。ただ、北海道を周回した情報収集艦は別行動をとっているという。
磯崎仁彦官房副長官は20日の記者会見で「ロシア軍の動向について注視するとともに、わが国周辺空海域における警戒・監視活動に万全を期してまいりたい」と述べ、ロシア側に日本側の警戒を伝達していることを明らかにした。