政府は、経済安全保障に関する機密情報の取り扱い資格「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」の制度化に向け、来年の通常国会に経済安保推進法改正案を提出する方針を固めた。複数の関係者が19日、明らかにした。政府は5月に成立した経済安保推進法に盛り込む方針だったが個人情報保護の観点から慎重論があり見送った。しかし、米欧各国の防衛や情報関連企業と日本企業が共同研究を行う際、資格が求められる事例が増え、早期の法制化が必要と判断した。
適格性評価は、機密情報へのアクセスを一部の政府職員や民間の研究者・技術者に限定する仕組み。人工知能(AI)や量子技術など最先端技術に関する機密情報に触れる関係者に資格を付与して明確にし、軍事転用可能な技術や民間の国際競争力に関わる情報が国外に流出することを防ぐ狙いがある。
ハイテク分野で台頭する中国などを念頭に、制度の導入で先行する米国や欧州の主要国から制度を持たない日本との共同研究では機密情報が漏れる可能性が警戒されてきた。放置すれば先端技術に関わる国際共同研究に日本企業が参加できなくなる恐れがあり、経団連は2月、適格性評価について「相手国から信頼されるに足る、実効性のある情報保全制度の導入を目指すべきだ」とする意見をまとめた。衆参両院の内閣委員会は経済安保推進法の付帯決議で、制度の必要性を求めた。
こうした情勢を踏まえ政府は、7日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」に「重要情報を取り扱う者への資格付与について制度整備を含めた所要の措置を講ずるべく検討を進める」と明記。資格が求められた事例や海外の実施状況などを検証し、導入に向けた論点整理を進めている。
ただ、資格を得る際には親族や交友関係、資産や飲酒歴なども審査対象となることが想定される。制度導入に当たっては、「プライバシーの侵害だ」などと再び反発の声が上がる可能性もある。
このため政府は、経済安保推進法に基づき今後、設置が予定される先端技術研究・開発に関する官民協議会の参加者を対象に適格性評価を行い、順次、適用を拡大していきたい考えだ。