将棋の藤井聡太棋聖(19)=竜王など5冠=に永瀬拓矢王座(29)が挑む第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局は15日、新潟市で指され、138手で藤井棋聖が勝ち対戦成績1勝1敗。慶大出身で初のプロ棋士となった上村亘五段(35)が分析した。
形勢不明の難解な最終盤で、藤井棋聖が見せた指し回しに驚愕(きょうがく)した。116手目△9七銀から120手目△4八歩までの手順は、延長戦に突入するかという拮抗(きっこう)した展開で突然、満塁本塁打が飛び出したようなもの。強烈な一撃だった。
△9七銀は永瀬玉の9筋の退路を封鎖するために貴重な銀を捨て石にしたが、より価値の低い桂馬を9六に放ってもおかしくなかった。さらに△4八歩の代わりには、通常の棋士なら△6七歩成も考えられた。
だが、結果論で言えば△9六桂や△6七歩成を選択していたら棋聖は激しい攻め合いの中、1手差で負けていた。2分の残り時間で「ここしかない」という針の穴を通す展開を読みきっていた力に、改めて驚く。
永瀬王座は序中盤、事前研究でペースを握っていたが、藤井棋聖は力比べの長期戦に持ち込んで五番勝負を振り出しに戻した。この勝利で流れは藤井棋聖に傾いたと感じる。連勝でタイトルを防衛すると予想する。(談)