フランス菓子を語るときに欠かせないのが、名前に「ガレット」がつくお菓子たちです。
ガレット・ブルトンヌ、ガレット・デ・ロワ、ガレット・ペルージエンヌなどなど。ガレットとは、丸い形の平たいお菓子や料理を指す名称です。
ガレットの元となったのは実はお粥(かゆ)だというのはあまり知られていません。農耕が始まった際、人々が収穫したものを使って作ったのが、大麦を砕いて煮たお粥だと言われています。このお粥から水分を除いて焼いたものが、ガレットの前身です。
まずは中世に「ウーブリ」という2枚の鉄の板で挟んで焼いたお菓子が生まれました。それがさらに発展してワッフルになったと言われています。仏北西部ブルターニュ発祥のソバ粉のクレープもガレットという名前がついていますが、こちらは小麦粉で作ったデザート用の白いクレープとは異なり、食事として提供されます。
ブルターニュは今でこそバカンスや観光にと人気ですが、昔はこれといった産物もない貧しい土地でした。そんな土地でも育つソバが中世にアラブから伝わりました。ソバ粉のことをファリーヌ・ド・サラザンと言いますが、サラザンはサラセン人という意味で、当時ヨーロッパ人は、アラブ人のことをサラセン人と呼んでいたのです。
ガレットの丸い形は、家族や友人と分け合っていただくというフランス菓子本来の姿を象徴しているとか。幸せな光景が目に浮かびます。
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【プロフィル】大森由紀子
おおもり・ゆきこ フランス菓子・料理研究家。「スイーツ甲子園」(主催・産経新聞社、特別協賛・貝印)アドバイザー。