安藤政明の一筆両断

是正勧告書受け取り拒否 上智大の強烈な対応の背景は

産経ニュース

「上智大に労基署勧告 賃金未払い 是正報告応ぜず」という見出しの記事が目に飛び込んできました(5月31日朝刊)。労働基準監督署から交付される是正勧告書の受け取りを拒否し、さらに是正報告にも応じていないと…。なかなかレアで強気な対応です。

是正勧告書とは、労働基準監督官による調査の結果、労働基準法違反が認められた場合に是正を求めて交付される指導文書です。受け取る者の職氏名を書くよう求められます。上智大の対応者は、これを拒否したのでしょう。是正勧告書は、行政指導文書です。行政指導なので、拒否しても違法ではありません。しかし上智大ですよ。労働基準監督官も驚いたことでしょう。そこで口頭で読み上げて是正勧告したようです。実に機転が利いた対応ですね。

上智大は勧告に従わず、是正しないままのようです。行政指導に従わないことは違法でなくとも、労働基準法違反は違法です。労働基準監督官は、行政官であると同時に司法官でもあります。応じなければ、書類送検の可能性が生じるわけです。上智大の対応は、非常にハイリスクな対応だといえます。念のためホームページを見てみると、法学部もあるし、法科大学院もあるようですが…。

指摘事項は、残業代未払です。1人の非常勤講師に対する、教材作成のための残業代ということです。105時間分・75万円、単純な時間単価は7千円強ですね。75万円分、どのような資料をどれだけ作成したかはわかりません。

労働法上の労働時間とは、事業所の指揮命令下にある時間とされています。仮に、非常勤講師が勝手に自宅で教材を作成したとしても、それは労働時間ではありません。労働基準監督官が労働時間と判断したわけですから、おそらく上智大から教材作成の指示などがあったと解される何かがあったのでしょう。それでも上智大は、是正勧告書の受け取りを拒否した上、実際に従わないのです。何がそうさせるのでしょうか。

一般論として、非常勤講師の給与は、授業1コマあたり単価を定めるパターンが多いです。そしてその給与には「授業の準備などに要する給与を含む」となっていることが多いのです。実際、上智大もそう主張しているようです。

上智大の一歩も引かない姿勢から、強固な意志が感じられます。かなり自信があるのかもしれません。雇用契約書に「給与は、授業1コマ+授業の準備時間など3時間分」、「準備時間3時間超過は、その都度事前承認を得なければ認めない」などなど明示していたとか。別の理由もあるかもしれません。同様の非常勤講師が他にもたくさんいるため、1人に支払うと収拾がつかなくなると考えているかもしれません。また、今回の非常勤講師がユニオンに加入し、労働基準監督署に申告したことを嫌悪しているかもしれません。どれだけ大きな組織や有名な組織でも、判断するのは人間です。人間には感情があります。これらは、表に出てこない理由です。闇の中です。

客観的には、是正勧告という事実を前提に推測するしかありません。1コマ給与の内訳として、きちんと業務ごとの単価や含まれる時間数が明示され、さらに業務ごとの労働時間管理が行われ、時間数が超過したときは差額が支払われているような実態があれば是正勧告はなかったでしょう。既に非常勤講師が加入するユニオンは、刑事告発をしています。このまま勧告に応じなければ、書類送検される可能性が高いといえます。書類送検されても、不起訴・起訴猶予となる可能性も結構高いと考えます。しかし、起訴されれば労働基準法違反の有罪確定率はほぼ100%です。その前に書類送検されただけで、大ニュースになってしまうことが痛いと思います。上智大はどうするか。

根本的な問題があります。労働時間に関する法律が、戦前の工場法をベースに定められていることです。これが原則すべての労働者に強制適用されています。工場作業員には適するでしょうけど、講師をはじめ、全く適さない職種がたくさんあります。労働の中身と全く無関係に、ただ時間数だけで賃金計算するのですから、適さない職種がないわけがありません。

実は政府も、このことを熟知しています。公立小中高の教職員には給与特別措置法を制定してまで、労働時間と無関係に固定給を支払うことを合法としているのです。なぜ同じ職種の私立小中高の教職員はダメなのか、政府は納得できる説明ができないでしょう。さらに言えば、なぜ学校だけ、という話しに広がるわけです。

煩雑な労働時間管理のために労働時間が割かれる。解釈も難しく労働紛争の原因にもなってしまう。1人あたり生産性が抑制され、気付けば安い日本となり、賃金も上がらない。この悪い流れの理由の一部になっているのではないでしょうか。賃金計算の基準が労働時間だから、おカネが絡んで紛争となるわけです。労働時間を基準とするのに適した職種、適さない職種があります。政府は、適さない職種に対して、可能な措置を検討をする必要があると考えます。

【安藤政明(あんどう・まさあき)】 昭和42年、鹿児島市生まれ。熊本県立済々黌高、西南学院大、中央大、武蔵野大卒。平成10年に安藤社会保険労務士事務所開設。武道と神社参拝、そして日本を愛する労働法専門家として経営側の立場で雇用問題に取り組んできた。労働判例研究会、リスク法務実務研究会主宰。黒田藩傳柳生新影流兵法荒津会師範、福岡地方史研究会監事、警固神社権禰宜・清掃奉仕団団長としても活動する。

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