22日公示、7月10日投開票で行われる見通しの参院選長崎選挙区(改選数1)で、自民党内に不協和音が生じている。昨年10月の衆院選、今年2月の長崎県知事選と相次いで勃発した内紛が尾を引いているためだ。参院選の候補者選考をめぐる国会議員同士の対立も影を落としており、陣営は足元の結束に向けて躍起になっている。
「自民党という組織は選挙のたびに強くつながり、力強く前に進む。地域の声をしっかりと携えて国会、党本部に乗り込んでいく」
11日、同県佐世保市での事務所開きで自民新人の山本啓介氏は声を張り上げ、団結を呼びかけた。前県議の山本氏は、現職の金子原二郎農林水産相が引退を表明したことを受け、党内の選考によって後継に選ばれた。
山本氏を担いだ金子氏も事務所開きに駆け付け「新しい時代の中で、新しい地域の国会議員を育てていくという機運が高まってきたと感じている。山本君が私の後継者として、長崎はもとより国のために頑張ってくれることを期待している」と持ち上げた。
長崎市に次いで県内第2の票田である佐世保市での事務所開きには、県議や市議、各団体の代表ら約100人が出席し、支持基盤の厚さを演出した。同市選出の田中愛国県議もあいさつで「昨年の衆院選、今年の知事選といろいろ大変なこともあったが、一致団結して頑張る」と、結束をアピールした。
こうして、あえて一枚岩を強調するのは、実際には陣営に亀裂が生じているからにほかならない。
昨年10月の衆院選。同市を中心とする長崎4区では、現職の北村誠吾元地方創生担当相に対し、県連は瀬川光之県議を推した。最終的には党本部の判断で北村氏が公認されたが、北村氏は支持固めに苦しみ、わずか約400票差という薄氷の勝利だった。
今年2月の知事選でも自民は真っ二つに割れた。県議らは、県連が推薦した大石賢吾・現知事を推すグループと、それに反発し4期目を目指した中村法道氏を応援するグループに分裂。国会議員も大石氏を推す金子氏らと中村氏側につく北村氏らに分かれ、激しい選挙戦となった。
今回、参院選で金子氏の後継となった山本氏が当時、県連幹事長として大石氏支援の中心にいたことも、参院選での結束を難しくしている要因の一つとなっている。県連幹部は「衆院選と知事選で裏では相当やり散らかしているから、恨みつらみはある」と漏らす。
さらに山本氏を金子氏の後継として選出する過程でも国会議員同士の対立が表面化した。山本氏を推す金子氏に対し、佐世保市の一部を含む長崎3区選出の谷川弥一衆院議員は、昨年の衆院選長崎4区でも候補に浮上した瀬川氏を推した。
金子氏が所属する岸田派と谷川氏が所属する安倍派による県内での勢力争いの様相も呈したが、最終的に県連は山本氏を後継に決めた。
金子氏側に敗れた格好の谷川氏の動きについて、自民関係者は「谷川氏は内々に(山本氏の支援を)するなと言っている。谷川氏に近い県議や市議も公には動けないだろう」と話す。佐世保市での事務所開きに谷川氏の姿はなかった。
自民県議重鎮は「しこりは当然ある。ない方がおかしい。それでもまとまらなければいけない」と戒めるように語った。
長崎選挙区には、いずれも新人で立憲民主党の白川鮎美氏、日本維新の会の山田真美氏、共産党の安江綾子氏、NHK党の大熊和人氏、諸派の尾方綾子氏、無所属の田中隆治氏も立候補を予定している。(小沢慶太)