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朝日が触れないトルコの不都合な真実 イスラム思想研究者・飯山陽

産経ニュース
イスラム思想研究者・飯山陽氏
イスラム思想研究者・飯山陽氏

朝日新聞デジタルは5月22日、フィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟に反対するトルコのエルドアン大統領が両国首脳と電話会談したことについて、「クルディスタン労働者党」(PKK)など「トルコがテロ組織に指定している勢力」への支援停止、トルコに対する武器輸出制限解除を要求する旨の記事を出した。エルドアン氏いわく「トルコとその安全保障に対する明らかな脅威への正当で確固たる戦いを尊重、支持することを我々が期待するのはごく自然」らしい。

しかし朝日はトルコの不都合な真実に触れていない。それはトルコがNATO加盟国でありながら、ロシアと中国に大きく依存しているという現実だ。

ロシアは実はPKKの代表的支援国である。しかしトルコは2013年、中露が主導する安全保障機構である上海協力機構の「対話パートナー」となった。PKK支援を理由に北欧2国のNATO入りを拒むのはつじつまが合わない。

トルコは欧州連合(EU)加盟も申請している。ところが13年にロシアを訪問したエルドアン氏は、上海協力機構への正式加盟を提案されればトルコはEU加盟を断念すると述べた。

19年にはロシアの地対空ミサイルシステムS―400を導入し、既に配備している。トルコはウクライナへの軍事侵攻を受けての対露制裁にも加わっておらず、欧州から締め出されたロシア・マネーの受け入れ先となっている。

18年の通貨危機以来トルコが経済的に依存を強めているのは中国だ。20年には中国との通貨スワップ協定に基づき初めて人民元による貿易決済を実行、21年にはスワップ上限を60億ドルに引き上げた。それと呼応するかのように、トルコがこれまで国内で匿(かくま)ってきた亡命ウイグル人を中国に強制送還している旨が報じられた。

NATO憲章前文には「締約国は、民主主義の諸原則、個人の自由および法の支配の上に築かれたその国民の自由、共同の遺産および文明を擁護する決意を有する」とある。独裁化を進めて民主主義や自由を抑圧し、女性やマイノリティーの人権をないがしろにし、中露依存を強めるトルコがNATO加盟国である問題が今回の一件だけで済むと考えるのは、あまりに楽観的だ。

【プロフィル】飯山陽

いいやま・あかり 昭和51年、東京都生まれ。イスラム思想研究者。上智大文学部卒、東大大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。著書に『中東問題再考』など。

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