私と新聞

第一生命経済研究所主任エコノミスト 星野卓也さん 記事の背景に思いをめぐらせて

産経ニュース
インタビューに応じる第一生命経済研究所主任エコノミストの星野卓也さん=18日、東京都千代田区(斉藤佳憲撮影)
インタビューに応じる第一生命経済研究所主任エコノミストの星野卓也さん=18日、東京都千代田区(斉藤佳憲撮影)

エコノミストとして活躍する星野卓也さん(33)。普段は日本の経済や財政について分析し、具体的なデータを用いて分かりやすく解説する仕事をしています。新聞記事からヒントを得て、新しいリポートを書くこともしばしば。エコノミストとしての原点には、ある上司との新聞にまつわる思い出があるといいます。

教科書のように活用

第一生命経済研究所での新人時代、私が興味を持った新聞記事を題材に当時の部長が毎日、議論する場を設けてくれました。例えば、金利の動向を伝えるニュースをもとに、なぜ金利が動いたのかという背景や、なぜ債券価格が下落すると金利が上昇するのかについて教わりました。

新聞を教科書のように活用して、知識を広げていったというのが、自分のエコノミストとしてのキャリアのルーツです。その部長が異動されたときには、みんなで新聞の紙面に見立てた寄せ書きを作ってプレゼントした思い出があります。今はインターンの学生に対して、自分が同じことをしています。

実は学生時代、私も新聞記者を目指していたときがあります。何かを調べて文章を書く仕事に興味があったのです。金融機関に入りましたが、今はエコノミストとして情報を皆さんに伝える仕事をしているので、自分の夢がある意味かなったと思っています。

記者の疑問から着想

平成30年に「認知症患者の金融資産 200兆円の未来」というリポートを書いたのですが、これはメディアでも大きく取り上げられ、話題となりました。世間では、認知症の方が持つ金融資産が膨れていくことで起きるであろう問題がすでに懸念されていましたが、実際にはどれぐらいの規模の問題なのかよく分かっていなかったからです。

このリポートはある新聞記者の方の疑問からヒントを得て、数字を試算したものです。その額は令和12年度時点には215兆円に達し、家計金融資産の1割を占めるという驚きの結果が出ました。

公的年金以外に夫婦で老後に2千万円の蓄えが必要との試算を出して注目された政府の有識者会議でもこのリポートは取り上げられました。200兆円という数字にはインパクトがありますから、より多くの人に老後の資産形成や次の世代への資産承継について考えてもらうきっかけになったと思います。

これと同じように、新聞を読む際は、一つ一つの記事に疑問を持つことを意識するように心掛けています。世の中に情報がこれだけあふれており、情報をインプットするだけでも大変です。ですが、それだけでは自分自身で新しいコンテンツを生み出すことはできません。自分なりの疑問を持ってそれを解決することがエコノミストの仕事につながってきます。

ニュースの背景にある経済状況に思いをめぐらせることが大事です。最近は物価上昇のニュースをよく見かけますね。先日は食料やエネルギー以外の部分はどうなのか疑問に思って、何百品目ものデータを調べてみました。資源価格上昇と直接関係のないサービス分野の価格も上昇しており、原油価格高騰で多くが説明できた平成20年の物価上昇局面とは状況が異なるということをリポートにまとめました。

見出しの大小に注目

新聞を読むと、文章の作り方の勉強にもなります。自分もリポートを書くことが仕事なので、限られた紙面の中で冒頭に結論を書いて、後の方に細かい情報を載せるなど、文章の作り方の基礎を勉強させてもらっています。

自分でリポートを書いていても感じることですが、どんな文章にも筆者の主観は混じります。客観的な情報に書き手がどう主観を加えるかが、情報の付加価値を左右すると思います。

最近は署名記事もよく見かけるようになりました。記者のスタンスが分かれば、読み手もその情報に向き合いやすくなります。それによって、ニュースの付加価値もさらに高まってきていると感じています。

私が扱う経済は政治や企業、消費者動向などすべての分野の話に関わってくるので、まんべんなく情報を把握する必要があります。紙面を流し読みして、見出しの大きさを見るだけでも、そのニュースの重要性を知ることができます。

そこが新聞とインターネットメディアの大きな違いですね。自分の興味のないニュースも目にすることで新しいアイデアが生まれることもあり、愛読させてもらっています。

ほしの・たくや 昭和63年神奈川県生まれ。一橋大経済学部卒。一橋大大学院経営管理研究科金融戦略・経営財務プログラム修了(MBA取得)。平成23年4月に第一生命保険入社、同年6月より第一生命経済研究所にてエコノミスト。日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析予測を担当。著書に「コロナ禍と世界経済」(金融財政事情研究会、共著)。跡見学園女子大学非常勤講師、東京財団政策研究所「中長期経済見通し研究会」委員、景気循環学会幹事。

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