旧ソ連で学んだ前橋汀子、バイオリンで奏でる平和への祈り

産経ニュース

バイオリニスト、前橋汀子(ていこ)が演奏活動60周年を迎えた。10代で単身、旧ソ連(現ロシア)に留学し、その後、世界を舞台に活躍を続けてきた。「弾く度に、少しでも新しい発見とアイデアを見つけて、その繰り返し」。演奏活動の第一線に立ち続けてきた前橋の音楽は、深化し続けている。

「レニングラード」の日々があるから

演奏活動60周年を迎えたバイオリニスト、前橋汀子©篠山紀信
演奏活動60周年を迎えたバイオリニスト、前橋汀子©篠山紀信

1961(昭和36)年、17歳で旧ソ連のレニングラード音楽院(現サンクトペテルブルク音楽院)に留学した。クラスにはロシア、ウクライナ、キルギス、ウズベキスタンなどの共和国から選び抜かれた凄腕が、国を背負って集まっていた。その力の差に愕然(がくぜん)として「私はおびえたウサギみたいだった」と振り返る。

当時は東西冷戦の真っただ中。せっけんやトイレットペーパーなどの日用品が足りずに困ったこともあるが、とにかくレッスンに没入した。練習室が足りず、代わりにトイレの個室に籠もって弾くこともあった。

「当時学んだ基本を今、思い出して実践しています。若い頃は勢いで何とかなることも、年を重ねるとそうはいかない。けれどもその基本があるから、60年たった今も弾けるのです」

「モスクワの思い出」をプログラムに

現在のロシアのウクライナ侵攻には、心を痛めている。オイストラフ、ミルシテイン、リヒテル、ギレリス…、旧ソビエトを代表した巨匠は多くがウクライナの出身だ。留学当時、それらの巨匠の実演に触れ、心を動かされた経験も今の自らの演奏の糧になっている。「突出した才能を多く生み出した、才能豊かな民族の国です。今、戦禍の映像を見るたびに信じられない思いです」

12日に大阪のザ・シンフォニーホールで開く、演奏活動60周年記念のコンサート。そこではヴィエニャフスキの「モスクワの思い出」をプログラムに入れた。ロシア民謡「赤いサラファン」の哀愁を帯びたメロディーを用いた一曲。ロシアの地に学んできた前橋だからこそ、一層、平和への祈りは強く響くはずだ。

また、大阪ではベートーベンのバイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」を弾く。近年、チェロの原田禎夫やバイオリンの久保田巧、ビオラの川本嘉子らとベートーベンの四重奏曲を演奏するためにカルテットを組むなど、ベートーベンの作品を大切に演奏してきた。実は60周年を記念して協奏曲をレコーディングしたばかりだ。

「カルテットを深く勉強したことによって、ベートーベンの楽譜の見え方が変わってきた」と明かす。「見慣れた当たり前だと思っていた景色でも、注意して見ると、普段気付かなかったものが見えてくるように、何度も読んできた楽譜でも改めて気付くことが多い。これで終わりということがない」

そうやって磨き続けた音楽を60周年のコンサートでも披露する。「聴いてくださる方がいて、はじめて私が成り立つ。ずっと弾き続けたいですね。一日でも長くステージに立ち続けたい」と、バイオリニストの矜持(きょうじ)を語った。(安田奈緒美)

11日午後2時から、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールでリサイタル。S席3500円。問い合わせは同ホール(077・523・7136)▽12日午後2時から、大阪市北区のザ・シンフォニーホールで「前橋汀子ヴァイオリン名曲選」。全席指定3500円。問い合わせはABCチケットインフォメーション(06・6453・6000)。

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