学校の安全認証、世界70校に 池田小事件教訓に創設

産経ニュース
災害時の行動や廊下を走らないよう求めるポスター。校内には安全に過ごすための工夫が随所にある=大阪市中央区の大阪府立中央聴覚支援学校(沢野貴信撮影)
災害時の行動や廊下を走らないよう求めるポスター。校内には安全に過ごすための工夫が随所にある=大阪市中央区の大阪府立中央聴覚支援学校(沢野貴信撮影)

児童8人が死亡、教員を含む15人が重軽傷を負った大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)の児童殺傷事件を教訓に、大阪教育大が平成26年に創設した学校の安全認証制度「セーフティプロモーションスクール」(SPS)が国内外に広がっている。これまでに70校が認証を取得し、さらに62校が申請中だ。事件は8日、発生から21年となった。事件事故や災害から子供たちを守るため、専門家は「校長のリーダーシップが欠かせない」と訴えている。

聴覚支援学校「子供に判断力と対応力を」

SPSの認証は、学校安全委員会を設置するなど7つの指標を満たした学校に与えられる。認証を受けた後は3年ごとに「生活」「災害」「交通」の分野に集中的に取り組み、認証校であり続けるためには、3年ごとに再認証を受けなければならない。中期目標や計画に基づいて対策を進め、その内容を改善し続けることや、成果を地域などと共有し、発信することも求められる。

聴覚に障害がある児童や生徒111人が通う大阪府立中央聴覚支援学校(大阪市中央区)は認証校で唯一の支援学校だ。平成30年に認証を受け、3年が経過した昨年、再び認証された。

校内には、子供たちが安全のために作ったさまざまな掲示がある。たとえば通行中にぶつかる事故を防ぐため、階段には右側通行の表示。30年6月の大阪北部地震では、安全対策として導入したトランシーバーが、子供たちの安否確認に役立った。学校安全担当の岩戸優香教諭は「取り組みを他の支援学校にも広げていきたい」と話す。

今年5月の避難訓練では、地元の消防署と連携。子供たちは事前に動画で避難の際の注意点を学習したうえで、白煙が充満したテントに入り、口元を押さえ、低い姿勢で出口に向かった。訓練後、「火事の怖さを想像できた」と話す子供もいた。

校外にいるときも自分で身を守ることができるよう、同校では知識と体験を結び付ける訓練を重視しているという。赤木瑞枝校長は「どんなときでも対応できる判断力や行動力を身に付けてほしい」と期待を込める。

地震の被災地でも進む認証

「認証はゴールではなくスタートライン。子供の安全のため、いっそう取り組みを進めていく」。昨春、認証を受けた大阪府高槻市立寿栄小学校で、学校安全コーディネーターの高松涼教諭はこう、気を引き締める。

同校では大阪北部地震でブロック塀が倒壊し、小学4年の女児が死亡。高槻市はブロック塀を撤去してフェンスにするなどハード面の整備を進めるとともに、同校を安全を推進するモデル校に指定した。

その後、同校は毎月、校内の安全点検を実施。教職員を対象とした訓練や研修は年10回以上行う。松山健次校長は「教員にスキルがないために、いざというときに子供を助けられないことがあってはならない」。

児童自身が安全を考える力を育もうと、自宅周辺のハザードマップをもとに話し合いをしたり、地域の危険な場所の確認をしたり。また、児童の発案で、防犯ブザーの使用方法や安全な鉄棒の使い方などをテーマにした動画も作成し、全児童が視聴した。高松教諭は「子供の安全意識が高まってきた」と手応えを感じている。

市教育委員会は寿栄小に近い3校で、今年度中の認証取得を目指している。担当者は「寿栄小発の取り組みを市域全体に広げていきたい」と話す。

東日本大震災で被災した宮城県石巻市も積極的に認証の取得を進め、市立小中学校51校のうち11校が認証を取得。現在も数校が認証を目指している。認証校は、教職員の研修会や発表会で活動内容を報告し、他の小中学校への浸透を図る。

市教育委員会の担当者は「認証校の取り組みや気付きを共有し、全体のレベルアップにつなげたい」と話した。


■「被害の影響と後悔、想像して」大阪教育大の藤田大輔教授(安全教育学)

藤田大輔教授

各学校がSPSの認証を目指す理由はさまざまだ。事故や災害の経験から、安全性を高めたいという学校もあれば、その予防のためというケースもある。いずれにしても校長のリーダーシップが欠かせない。

海外の認証校も増えており、中国では、学校安全の視点を取り入れて保護者の信頼を得たい、学校経営のプラスにしたいという学校が多い。地震や津波、土砂災害といった自然災害の脅威が日本とも共通するタイは、教育省が中心となって地域ごとにモデル校を作ろうとしている。英国では、子供の権利確保という面から注目されている。

認証校では3年ごとに、生活安全、災害安全、交通安全のうち1つの分野の活動を集中的に進め、9年間ですべての取り組みを行うことを目標としている。

他の認証校の優れた試みを共有する動きも進んでいる。宮城県石巻市の小学校の避難訓練の内容を視察した大阪の小学校が取り入れる、英国の認証校の関係者が都内の小学校で目にした非常持ち出し袋に感心し、導入した例などがある。

十分な安全対策を取らずに事故や災害が発生し、児童や生徒が被害を受けたときの後悔や反省を想像してみてほしい。被害者は心身を深く傷つけられ、その影響は長期に及ぶこともある。責任をもって子供を預かることができるよう、学校は安全に向けた取り組みを実行に移すことが求められている。


■セーフティプロモーションスクール(SPS) 海外の学校安全の認証制度を参考に平成26年に大阪教育大が創設。国内では35校、海外では中国やタイ、英国などで35校が認証を受けた。大阪教育大の教授らでつくる日本セーフティプロモーションスクール協議会の理事らが、認証を希望する学校を訪れて取り組みの内容を確認し、指導や助言、審査を行って認証の可否を決める。

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