7日の外国為替市場の円相場は一時、1ドル=132円20銭まで下落し、約20年2カ月ぶりの円安ドル高水準を付けた。原油や原材料価格の上昇を受け、4月の実質賃金が前年同月比1・2%減となるなど家計への打撃は大きい。企業の本格的な賃上げは待ったなしだ。
円安再加速の要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを急ぐとの観測から米長期金利が上昇したことだ。
対照的に日銀は大規模金融緩和を続けている。黒田東彦(はるひこ)総裁は6日、東京都内で講演し、日本経済はコロナ禍から立ち直っておらず、「揺るぎない姿勢で緩和を継続していく。引き締めを行う状況には全くない」と強調した。
黒田氏はまた、「家計の値上げ許容度も高まってきている」と述べた。家計は値上げで打撃を受けており、発言が「波紋を広げる可能性がある」との報道もある。
ただ、黒田氏の発言で注目されるのは、2%の物価目標達成へ向けて「家計が値上げを受け入れている間に、良好な経済環境を維持し、2023年度以降の賃金の本格上昇につなげていけるかが当面のポイントだ」と述べた点だ。
4月の毎月勤労統計調査では、基本給や残業代などを合わせた現金給与総額(名目賃金)は1・7%増の28万3475円で4カ月連続増えたが、物価上昇を加味した実質賃金は1・2%減だ。
金融緩和政策によって国内の雇用は維持され、円安の影響で22年3月期に約3割の企業が最高益を記録した。黒田氏は大幅賃上げに向けて企業努力や政策対応を促したとみられる。