リニア中央新幹線計画で、トンネル工事に伴う大井川の流量減少への地元懸念などを理由に未着工になっている静岡工区をめぐり、静岡市の田辺信宏市長は7日の記者会見で、JR東海が流量維持策として新たに示した田代ダム(同市葵区)の取水制限案について「議論すべき案だ」と評価した。「議論のきっかけにするという意味で受け入れたい」とも述べ、停滞しているリニア議論の進展に期待した。
JR東海は4月、大井川上流にある東京電力系の田代ダムで水力発電用に行われている取水を、トンネル工事中に県外流出する湧水と同じ量だけ抑制することで、川の流量を維持する-との案を提示。水利権に関して東電側の合意が必要なため今後、静岡県の専門部会で実現可能性などが議論されることになっている。
田代ダム関連で静岡市には、発電実績に応じて交付額が決まる電源立地地域対策交付金(電源交付金)が配分されている。市によると、令和4年度当初予算ベースで約5544万円。田辺氏は「取水制限の場合、発電量が減少し、交付金に影響があるかもしれないが、市への影響は限定的だ」との見方を示した。