北大西洋条約機構(NATO)で最も新しい加盟国である北マケドニアのブヤル・オスマニ外相が6日までに産経新聞のインタビューに応じた。ウクライナを侵略するロシアがサイバー攻撃などによって、北マケドニアなどバルカン半島諸国の不安定化も図る可能性を懸念し、日本が地域の安定維持に向けて関与を強化することに期待を示した。
オスマニ氏は5月29~31日の訪日時に林芳正外相と会談し、ウクライナ侵略が国際秩序の根幹を揺るがす行為との認識で一致。「自由で開かれたインド太平洋」構想への支持を表明した。両外相は経済交流強化のための技術協力協定にも署名した。
北マケドニアは旧ユーゴスラビア解体に伴い1991年に独立。2020年3月にNATOに加盟した。人口は約200万人。オスマニ氏によると、ウクライナ戦争では、非加盟ながら欧州連合(EU)の対露制裁と共同歩調をとり、ウクライナに軍事・人道支援を行っている。
訪日直前にウクライナ入りしたオスマニ氏は取材に「ウクライナは自国だけでなく、北マケドニアや日本が共有する価値のために戦っている」と語った。NATO加盟国として太平洋側の「建設的」なパートナーである日本との「緊密な連携」を重視していると強調し、訪日を通じた関係強化に手応えを示した。
バルカン半島は歴史上、大国間の覇権争いの舞台となり、ロシアの影響力は強い。民族対立もくすぶり不安定だ。北マケドニアや周辺国が目指すEU加盟への手続きは膠着(こうちゃく)している。
オスマニ氏は、ロシアがサイバー攻撃やプロパガンダ(政治宣伝)など非軍事的手法で「人々の不満など地域の脆弱(ぜいじゃく)性に付け入り、悪意ある介入をしかけてくる」と警戒。EUとともに地域安定のために「日本がプレゼンスを強化することが重要」とし、そのための協力促進が「東京に来た理由の一つ」と強調した。
バルカン半島には近年、中国も巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて進出し、北マケドニアも中国と中東欧諸国の経済協力枠組みに加わる。だが、オスマニ氏はウクライナ戦争での中国の対露協調姿勢を踏まえ、「中国は国際社会における自らの役割を見直した。われわれも態度を見直す」と表明。中国への警戒を強めるNATOやEUとの協調を重視する考えを示した。
(宮下日出男)