新疆内部資料 弾圧の裏付けも 国政に関心高まらぬ 在日ウイグル人に落胆

産経ニュース
新疆ウイグル自治区のカシュガル地区で銃を肩にかけて警備する警察官(共同)
新疆ウイグル自治区のカシュガル地区で銃を肩にかけて警備する警察官(共同)

中国新疆ウイグル自治区でウイグル人が収容された施設の内部写真や収容者リストなど中国当局の内部資料数万件が流出し、世界各地で弾圧の実態を告発する元収容者らの証言が裏付けられた形となる。ただ、日本で暮らすウイグル人の心境は複雑だ。証言に懐疑的な一部の見方を打ち消した一方、同胞が直面する凄惨(せいさん)な迫害は目を覆うものだったからだ。「証拠」が出たにも関わらず、ウイグル人迫害に関心が高まらない国会などの様子にも心を痛めている。(奥原慎平)

「ウイグル民族がジェノサイド(民族大量虐殺)を受けている事実が、誰も否定できない形で立証された。中国に対し、否定的な態度をとるのは犯罪を助長するのと同じではないか」

日本に帰化したウイグル自治区出身のグリスタン・エズズさんは産経新聞の取材にこう語った。

資料は自治区カシュガル内の公安ネットワークからハッキングしたもので、米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」のアドリアン・ゼンツ上級研究員が入手し、国内外のメディアが報じた。

収容者リストは、カシュガル地区コナシェヘル県のウイグル人ら2万人以上の身分証番号や収容理由が記されている。また、10~70代の収容者2800人超の顔写真のほか、棍棒(こんぼう)を持つ者など多数の職員が囲む中、収容者が腕に注射のようなものが当てられたり、手錠や足かせ、覆面をつけて移動させられたりする写真がある。

中国共産党幹部が「海外からの帰国者は片っ端から捕らえろ」「拘束者が数歩でも逃げれば射殺せよ」と指示していた発言記録もあった。

「中国政府は収容所の目的を『再教育』のためと言っているが、お年寄りへの再教育に何の意味があるのだろうか。写真に映った収容者の表情から絶望感や無力感を感じる」

関東圏の製薬会社に勤めるイルクさん(仮名)は流出資料について、こう述べる。イルクさんらは自治区に残した家族に危害が加えられる危険があり、匿名を条件に取材に応じた。

イルクさんは「隣国の内部でひどい人権侵害が行われていることを知ってもらいたい。日本人にはわれわれのような目にあってほしくない」とも訴える。ウイグル民族を対象に中国政府が弾圧を行っている決定的な内部資料といえるが、日本社会の反応は薄い。

イルクさんが5月下旬、東京都内で迫害の実態を知ってもらおうと街頭活動を行ったが、チラシを受け取る通行人は少なかった。

メーカーの研究所で働く30代のムハンマドさん(仮名)も「泣いているウイグル人女性の写真を見ると、自分も泣きそうになる。周囲の在日ウイグル人も落ち込んでいる」と語る。「弾圧の実態を告発してきた元収容者の証言と一致している。日本の政治は『証拠が足りない』と言い、中国政府への制裁などに慎重だったが、これ以上の証拠はない」と日本政府に具体的な行動を訴える。

ただ、今国会で採択を目指した中国の人権問題に関する参院決議は暗礁に乗り上げたまま、15日の会期末が迫っている。

公明党の山口那津男代表は中国当局の人権侵害は裏付けが乏しいとの認識を示しており、今月2日の記者会見で「会期が迫る中、国会の優先的な議題を仕上げるのが今の参院の役割だ」と述べ、決議に消極姿勢を示している。

日本ウイグル協会のレテプ・アフメット副会長は「中国当局は徹底した情報遮断の体制を敷いており、これ以上の証拠を今後入手する可能性は低い。国際社会と並び、中国政府を制裁する勢いにしなければ、この流出資料の価値は無くなってしまう」と危機感を強める。

東京で暮らす在日ウイグル人のタランチさん(仮名)は日本社会の関心の薄さについて、こう警鐘を鳴らす。

「中国の静かな侵略は年月をかけ粛々と進められた。ウイグル人も当初、中国人に対し『同じ人間だから』と歓迎した結果、文化や宗教を失い、何百万人の人が収容所に入れられた。日本を守りたいならば、中国人の背景を調査し、ウイグル問題についてはっきりとジェノサイドだと決議すべきだ」

ウイグル人の人権問題を追及してきた立憲民主党の松原仁元国家公安委員長は産経新聞の取材に、流出資料について「尊重されるべき人権がウイグル自治区で踏みにじられているかを如実にした」と述べ、国政も問題視すべきとの考えを示し、こう語る。

「人権や自由を尊重する国家は立ち上がるべきだ。われわれは戦う人権主義、戦う民主主義でなければならない」

立民は10日にも海外で人権侵害に関与した人物や団体に制裁を科すための人権侵害制裁法案を今国会に提出する。

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