中国やロシアなど安全保障上のリスクや、感染症などへの対応、為替の円安基調を背景に、日本の製造業の「国内回帰」や「国内強化」が進んでいる。各国の争奪戦となっている半導体など戦略物資だけでなく、日用品でも「メード・イン・ジャパン」を強化する企業が増えてきた。10年ほど前までの「超円高」時代には生産拠点を海外に移し、空洞化が進んだが、流れは逆転したのか。
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半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、2014年10月に閉鎖した甲府工場(山梨県甲斐市)での生産を24年から再開すると発表した。電気自動車向けの需要拡大を見込み、電力を制御する「パワー半導体」を量産する。同社は「経済産業省の半導体戦略を踏まえ緊密に連携する」としており、工場再開でパワー半導体の生産能力は現在の2倍になるという。
電子部品大手の日本電産は川崎市の研究所に「半導体ソリューションセンター」を設置した。これまで取引がある半導体メーカーとの関係を強化し、合併・買収(M&A)を含めた生産体制の整備を検討するという。
電子部品大手では、京セラも有機パッケージや水晶デバイス用パッケージなど、半導体部品の増産に伴う生産スペース確保を目的に、鹿児島県の川内(せんだい)工場に国内最大の建屋となる新工場棟を建設すると発表した。同社広報室は「増産をしないと生産が追い付かない。技術流出防止の観点から、最先端の製品は国内の方がいいという判断は以前からあった」とする。