埼玉県川口市は、JR川口駅(同市)を上野東京ラインの停車駅とすることを目指し、費用負担などに関するJR東日本との交渉を本格化する方針を決めた。駅周辺の整備方針「川口駅周辺まちづくりビジョン」に、上野東京ラインを念頭に置いた「中距離列車の停車ホーム設置」という目標を盛り込み「需要にふさわしい鉄道輸送力の強化を図る」との方向性を示した。
川口駅の令和2年度の乗車人数は1日当たり約6万4千人。ホームは京浜東北線の1本しかないためラッシュ時の混雑は深刻で、遅延や運休があると駅周辺に利用者があふれることもある。
こうした状況を解消するため、市は長年、JR側に対し、上野東京ラインなどの中距離列車の停車を求めてきた。
難色を示していたJR側は平成30年の市側の要請に「JRで絵を描く」と前向きな回答に転じた。ただ、その後JR側から、駅舎改築を含むホーム増設にかかる約400億円を市が全額負担する案が示され、市が反発して話し合いは進んでいなかった。
交渉を前進させたい市は「まちづくりビジョン」策定に乗り出し、検討会にはJR側も参加した。市の担当者は「中距離列車停車を含めたまちづくり全体について、JR側とともに考えていく環境が整った」と説明し、今後、費用負担などに関する議論を本格化させることを目指している。
JR東日本大宮支社の担当者は「ホーム設置が決定した事実はないが、まちづくりビジョンの実現に向けた検討には協力する」と話している。(中村智隆)