5月末、自宅と職場がある北京市朝陽区で新型コロナウイルスの感染対策が一部緩和され、在宅勤務の指示や地下鉄駅の一部封鎖などが解除された。約2年前に中国全土で感染が拡大した際、北京では今回ほど制限措置は厳しくなかった。約2カ月の都市封鎖を経験した上海市民には及ばないだろうが、それでもストレスは大きかった。
特に困ったのが、自宅周辺の地域でタクシーの運行とスマートフォンを使った配車サービスが止まったことだ。これらは生活インフラであり、深夜に子供が苦しんでも自分で病院に連れていく方法がないと悩んだ。妻と「緊急時には配車可能な区外まで子供を抱えて走る」と方策を考えたが、幸い実行せずに済んだ。
複数の感染者が出た居住区の住民が一斉に遠方の隔離施設に移送される事態や、当局者が感染者の住宅に入り大量の消毒液を噴霧する様子も伝えられた。上海で防疫担当者が住民に「ここは米国ではなく中国だ。『なぜ?』と聞くな」と強制的に防疫措置を進めようとする動画がインターネット上で出回った。
「感染が怖いのではなく、コロナ対策に巻き込まれるのが怖い」。5月に北京を中心とした日系の会員企業にアンケートを実施した中国日本商会は、悲鳴のような回答を強調した。こうした声は中国人からも聞く。(三塚聖平)