「ちょっとそこまで大人旅」。こう書くのは簡単だし、生き方上手な粋な男が口にするフレーズのよう。『サライ』や『おとなの週末』のような雑誌の特集ならハマるだろうが、小粋なバッグを肩に下げ、買ったばかりのカメラなども必要な気がする。
なんとか本線に乗って山あいのせせらぎのあるところまで足を伸ばし、甘味処で昔ながらの串団子などを、とそういうのはしんどい。
私の場合はぐっと精神年齢を押し下げて「初めての街まで遠足だ」となる。普段着でいつものリュックを背負い、最寄駅から往復で1000円以内のところまでしか行かないぐらいが丁度いい。決して「旅」ではなく、あくまでも遠足」なのだ。
先日、そんな心持ちで遠足した先は東京都足立区の綾瀬だった。綾瀬という駅名は知ってたけれど、私の生活圏外。何よりも初めての足立区である。そこを選んだ大きな理由は、夕刊フジの編集長がしきりに「綾瀬いいですよ、ぜひ一度」と言うからで「串のこたに、という人気の居酒屋があります」という情報をくれた。さっそくその店を検索すると…詳しくは後述するが「行くしかない」魅力満載で、その瞬間に「今回の遠足は綾瀬」に決定した!
遠足は前日の夜から始まっているもので「明日は綾瀬だ」と思うと心も弾み、なかなか寝付けない。仕方ないのでバーボンを飲みながら、綾瀬の下調べに没頭し、いつもより飲み過ぎる。これぞ大人の遠足だ。
翌日、うちを出たのはお昼過ぎで「決して無理しない」という我がルールには忠実に従う。井の頭線で渋谷へ、東京メトロの半蔵門線から千代田線に乗り継いで綾瀬まで小一時間。片道420円だ。