話の肖像画

落語家・桂宮治(1) 落語界の「シンデレラボーイ」

産経ニュース
桂宮治さん(酒巻俊介撮影)
桂宮治さん(酒巻俊介撮影)

《今年の元日、国民的人気演芸番組「笑点」(日本テレビ系)の特別番組で、新たな大喜利レギュラーメンバーとなることが発表された。落語の門をたたいて14年、真打ち昇進からわずか11カ月。まさに落語界の〝シンデレラボーイ〟だ。オファーを受けたのは昨年。セミの鳴き声を聞きながら、短パン半袖姿で東京都港区の日テレ本社ビル17階の会議室を訪れたときのことだった》


当時出演していた「笑点特大号」(BS日テレ)のプロデューサーさんに電話で呼び出されたのです。実は数日前に、あるラジオ番組で笑点メンバーをいじっていたので、叱られるのかと思っていました。なのに、アイスコーヒーを飲みながらの雑談が30分も続く。我慢できなくなって、「僕、なんで呼ばれたんですか」と尋ねてしまいました。

「ラジオで笑点メンバーを…」と自分から懺悔(ざんげ)したんですが、「そうなんだ。全然知らない。そんなのどうでもいいよ」と言われて、「じゃあ、なんなんですか!」と聞いたら、「宮治さんに『笑点』本編のレギュラーメンバーになってもらいたいと思っているんだけど、どうですか」と言われました。いやもう「青天の霹靂(へきれき)」という言葉はこういうときに使うものなんですか。頭に雷がボーンって落ちたような感じでした。

「笑点メンバーになりたいなあ。なれればいいなあ」と、若手大喜利のメンバーならだれもが思っていることです。でも、実際にそんなオファーが自分に来るとは思ってもいませんでしたから。本気なのか、冗談なのか、よく分からなくて。すぐに思ったのはこれ、「ドッキリ番組」かなと。それで「ドッキリですか」と聞いたら、一緒にいた制作会社のプロデューサーさんが「そうだよ」って。

「本当ですか」

「いや、冗談、冗談」

よく分からなくなって、会議室の中で小型カメラが仕込まれていないか、探すそぶりをしたりして…。

「なんなんですか」

「本当なんだよ」

「僕ですか。いいんですか」

「お願いしたいんだけど、やれるかなあ」

「はい、そんなありがたい話ないんで、僕でよければ」

そんなやりとりの後、「めちゃくちゃうれしい」「うわ、すごい」という気持ちがようやく湧いてきました。


《「笑点」といえば、昭和41年5月以来、放送回数2800回を超えるお化け番組。毎週日曜日の夕方になると、「ちゃっちゃかちゃかちゃか、ちゃっちゃ」というテーマ曲が日本中のお茶の間に響く》


落語芸術協会会長の春風亭昇太師匠以来、29年ぶりの抜擢昇進で真打ちになると言われたときもそうだったんですけど、すごくいい話をいただくと、初めは「やった」「頑張ろう」という気持ちがドーンとくる。でもそんなのは一瞬で消えて、「大丈夫かな」「僕にできるかな」という不安な気持ちの方がすぐに大きくなってくるんですよね。

こういうとき、人間の感情ってただ「やった」「うれしい」だけではない、全然違う感情がグチャグチャになるんですね。ただ、「こんな話をいただいて、断るのは絶対に違う」と思って、「すみません。一生懸命頑張らせていただきます」と答えました。(聞き手 池田証志)

【プロフィル】桂宮治

かつら・みやじ 昭和51年10月7日、東京都品川区生まれ。本名、宮利之。桂伸治(三代目)に入門し、「宮治」で前座。平成20年2月に楽屋入りし、24年3月に二つ目昇進。令和3年2月、5人抜きの抜擢(ばってき)で真打ちに昇進した。今年1月から人気演芸番組「笑点」大喜利の新メンバーに。NHK新人演芸大賞落語部門大賞。若手ユニット「成金(なりきん)」の元メンバー。化粧品のトップセールスマンという異色の経歴も。

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