政府が31日に示した経済財政運営の指針「骨太の方針」案と、その中核となる成長戦略「新しい資本主義」実行計画案には、デジタル技術を活用した経済成長の推進が明記された。次世代インターネットサービス「Web(ウェブ)3・0(スリー)」活用の法案検討や、スタートアップ(新興企業)育成の環境整備などがその柱となる。今後、関係省庁で関連法案の整備や課題の抽出などを進める方針だ。
ブロックチェーン(分散型台帳)と呼ばれる暗号技術を活用して個人同士がつながる「非中央集権的」ネットワークのウェブ3・0は、現在の巨大IT企業が覇権を握る状況とは異なり、個人でデータの活用や管理がしやすくなるため、国内から世界に通用するサービスを提供するスタートアップの創業が期待されている。3次元の仮想空間「メタバース」や複製できないデジタル資産「非代替性トークン(NFT)」などのサービスや技術が生まれている。
ただ、メタバース内で視聴されるデジタル著作物の著作権法上の扱いや、NFTや暗号資産の法的位置付けなどウェブ3・0に関する環境整備は進んでいないのが現状だ。今後、政府はメタバース内でのデジタルコンテンツの利用拡大に向けた関連法案を来年の通常国会に提出するほか、暗号資産の審査基準の緩和などについて関係省庁が具体的な整備に乗り出す方針だ。
一方、「新しい資本主義」の担い手として岸田文雄首相も期待を込めるスタートアップ政策については、司令塔機能を新設した上で、年末までに育成の全体像をまとめた5カ年計画を作成する。知見を持つ海外の大学を誘致した上で支援拠点「スタートアップキャンパス」を設置するほか、成長資金の調達や人材育成についても強力に支援していく考えだ。(大坪玲央)