湖底から引き揚げて復元された“空飛ぶ戦車” 衛星写真がもたらしたロシアの新ビジネス

SankeiBiz

衛星写真で不時着した大戦機を探索する新ビジネス

広大な国土のいたる地域で戦闘が繰り広げられたロシアには、いまだに第二次大戦の遺物が無数に残されている。人目に付く場所で発見された価値のある遺物は、すでに大多数が回収されている。だが人跡未踏の大地が広がるロシアには、まだまだ未発見の第二次大戦遺物が山ほど眠っていることは間違いない。ところがGoogle Mapが代表するように、誰でも簡単に衛星写真を利用できるご時世になると、そんな状況は一変した。

湖底からから引き揚げ未復元状態のまま、米航空博物館に売却されたメッサーシュミットBf109E-1/E-7。機体には酷い腐食は見られず塗装も残っており、半世紀余も水中で眠っていたとは思えない(筆者撮影)
湖底からから引き揚げ未復元状態のまま、米航空博物館に売却されたメッサーシュミットBf109E-1/E-7。機体には酷い腐食は見られず塗装も残っており、半世紀余も水中で眠っていたとは思えない(筆者撮影)

上写真のメッサーシュミットBf109E-1/E-7も、近年の状況変化よって発見された1機であり、とある湖の衛星写真に飛行機らしき影が写っていた。

2003年、現地に出向いたロシアの残存第二次大戦機探索チームは、湖底に沈む機体を発見して引き揚げ、回収することに成功した。低水温の淡水に沈んでいたこのBf109E-1/E-7は、驚くほど状態が良く部隊標識や製造番号まで、はっきり確認することができた。

履歴を辿ると1939年製造のBf109E-1で、フランスの闘いと英本土侵攻作戦に参加した後、工場に戻されて新型のE-7へ改修され、再び東部戦線へ送り出された。そして1942年、ドイツ空軍パイロットであるウルフ・デートリッヒ・ヴィッツ中尉の操縦で、爆撃機の護衛任務中に被弾し主脚を引き込めたまま凍結した湖に胴体着陸を行って、本人は脱出・生還した。やがて氷が溶けて湖底に沈んだBf109E-1/E-7は、人目に触れることなく半世紀余の眠りについたのである。

前回紹介したヤコヴレフYak-9UM再生産機と零戦22型新造機が、西側諸国の航空博物館や大戦機収集家に売れて、新たな“産業”になることを認識した新生ロシア航空産業界は以降、積極的に第二次大戦機の復元・販売に乗り出した。

さらに折良く、経済危機を乗り切ったロシアでは、各地で開催される戦勝記念パレードや航空ショーで、祖国大戦争(第二次大戦のソ連側呼称)勝利に貢献した赤軍大戦機のデモンストレーション飛行が盛んに行われるようになり、復元機の需要が高まったことも追い風となった。コロナ禍とウクライナ戦争の影響で、現状は把握できていないが、数年前まで第二次大戦機の復元・販売は、ロシアの“裏”航空産業となっていたのだ。

“空飛ぶ戦車”イリューシンIl-2シュトルモヴィク

イリューシンIl-2M3シュトルモヴィクは、単発複座としてはかなり大型機。胴体前半部そのものが防弾鋼板で構成されており、小口径機銃弾程度なら跳ね返した

米フライング・ヘリテイジ・コレクション航空博物館(以下FHC/現在は閉館)が所有するイリューシンIl-2M3シュトルモヴィクも、湖底に沈んだ機体を発掘・回収して、飛行可能な状態にまで再生した稀少な復元機である。

Il-2シュトルモヴィクは、爆撃機や輸送機など大型機を得意とするイリューシン設計局が手掛けた対地攻撃機だ。搭乗員とエンジン周辺に頑強な防弾鋼板を張り巡らせ、23mm機関砲2門+7.62mm機銃2挺+12.7mm機銃1挺+爆弾600kgという重武装で、空からドイツ機甲部隊に襲いかかり、ついに国土から撃退した赤軍きっての功労機である。ちなみに小口径機銃弾なら跳ね返し、とても航空機とは思えない重装甲から、Il-2シュトルモヴィクは“空飛ぶ戦車”とも呼ばれた。

今、あなたにオススメ

izaスペシャル

  1. 中露〝蜜月崩壊〟習主席がプーチン氏見捨てた!? 「ロシアの敗北は時間の問題」中国元大使が発言 インドの浮上で変わる世界の勢力図

  2. 長谷川京子が安藤政信と6時間ほぼ裸でシャワー室に… 「反響が楽しみ」

  3. 【安保法案特別委採決】辻元氏、涙声で「お願いだからやめて!」と絶叫 民主、プラカード掲げ抵抗

  4. 東京新聞・望月衣塑子記者 私見や臆測織り交ぜ、的外れの質問を連発 「官房長官は出会い系バーで女の子の実態聞かないのか?」

  5. 「産経がいると話しづらい」「テロリストと同じ」記者はこうして東京新聞・望月記者の講演会取材を拒否された

今、あなたにオススメ