『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』大山誠一郎著(実業之日本社・1650円)
「今、日本でもっとも愛される本格ミステリ作家が贈る『至極の作品集』」-。
本作のキャッチコピーです。大げさに思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。浜辺美波さん主演で連続テレビドラマ化された『アリバイ崩し承ります』に続くシリーズ第2弾ですが、その面白さは、前作を優に上回ります。著者の大山誠一郎さんは、読者はもちろん、同業のミステリ作家、評論家、映像関係者、ゲームクリエイターから熱烈な人気を得ています。
物語は、難事件に頭を悩ませる新米刑事が、美谷時計店の店主・時乃にアリバイ崩しを依頼し、彼女がそれを解き明かすというシンプルな構成です。しかし、考え抜かれたストーリー、静かで精緻な文章、素朴で愛らしい登場人物が読者をとりこにします。
5編の短編からなる本作でも特に注目なのが、今年、第75回日本推理作家協会賞短編部門を受賞した「時計屋探偵と二律背反のアリバイ」です。同時刻に県をまたぐ異なる場所で、2人の女性が殺されます。しかし、容疑者は男性1人。そんな解決不可能と思われる難事件に、時乃が挑みます。
他にも、容疑者の親族3人がおのおの鉄壁のアリバイを持つ「時計屋探偵と多すぎる証人のアリバイ」、時乃が高校時代に挑んだ「時計屋探偵と夏休みのアリバイ」を収録。
謎解き小説の楽しさを堪能できる一冊で、ミステリ初心者にもお薦めです。
(実業之日本社文芸出版部 阿部雅彦)