ビブリオエッセー月間賞

4月は『隂山メソッド 徹底反復 音読プリント』、大阪府羽曳野市の別所昭子さん

産経ニュース
月間賞を選ぶ福嶋さんと江南さん(右から)=大阪市中央区(鳥越瑞絵撮影)
月間賞を選ぶ福嶋さんと江南さん(右から)=大阪市中央区(鳥越瑞絵撮影)

本にまつわるエッセーを募集し、夕刊1面とWEBサイト「産経ニュース」などで掲載している「ビブリオエッセー」。皆さんのとっておきの一冊について、思い出などとともにつづっていただき、本の魅力や読書の喜びをお伝えしています。4月の月間賞は、大阪府羽曳野市の別所昭子さん(82)の『隂山メソッド 徹底反復 音読プリント』に決まりました。ジュンク堂書店のご協力で図書カード(1万円分)を進呈し、プロの書店員と書評家による選考会の様子をご紹介します。


福嶋さん「歩んだ道の長さ武器に」、江南さん「引用とユーモアが絶妙」


--ビブリオエッセーも4年目に入りました。新年度最初の月間賞です。全体の印象からお願いします

福嶋 今回は特に年配の方の投稿が質量ともに勝っていました。年配の方にはやはり書く材料があるな、それは強みだなと思いました。

江南 15歳には15歳の感覚があるし、70代、80代でないと書けないこともある。気になったのは、実在の人物の評伝などを土台にした小説の場合、作家のバイアスとともにフィクション化されるわけですが、そこを無視して、人物の本当の姿や思考がそうなのだと断定的に考えてしまいがちなことです。あくまでも創作とわかってるよ、という観点がエッセーにもほしいです。

福嶋 コロナ禍も収束に向かっている感があるが、ゴール感がない。ウクライナの戦争も同様の展開になりそうで、なんとなく鬱屈(うっくつ)したムードが漂っている。そんな全体のムードとなんとか折り合いをつけようとしている気がしました。その中では『トッキュー‼』が気に入りました。ゴツゴツして磨かれていない感じはするのですが、おもしろい。思った通り素直に書いている。

江南 これまで、マンガの説明は難しいと感じてきましたが、こちらは好印象でした。絵についての評価があるわけではないが、自分にとってとても大事な作品だということが伝わってきて、強い。

福嶋 『春は鉄までが匂った』もよかった。本屋の仕事も地味で単純作業も多いのですが、僕自身それがけっこう楽しいので、内容に共感しました。

江南 それに、直接内容とは関係がないシャネルの言葉や叔父さんの言葉を持ち出してきて「職人礼賛」というご自分のエッセーのテーマを繰り返し表現したのもよかったです。しかも40年以上も前の本をいま読んでいる。そんな目線もおもしろかったですね。

福嶋 『暗夜行路』は、実は作品にはほとんど触れていないんですよね。でも、この短いなかに昔の文芸部のエピソードや50年間働いた自分の物語など、この人にしか出せないリアリティーがあっていいなと思いました。『隂山メソッド 徹底反復 音読プリント』はこういう本の使い方があるのかと…。

江南 子供用の学習教材を、病気になって使われた経験がベースのエッセーですね。そのプリントを同じお年寄りの友達がくださったと。本からの引用部分もいいし、ユーモアがあります。

福嶋 『隂山メソッド』は今日うたわれている教育のICT(情報通信技術)化とは真逆ですが、なお根強い人気があるんです。

江南 弟たちと一緒に音読した記憶も回想され人生の長い時間の流れを感じました。まさに、70代、80代でなければ書けないもの。今回、年配の男性たちが石原慎太郎など同時代作品に関心を寄せ、このかたは昔ながらの文芸作品をいつくしんだ。そんな対照性も、個性とみました。

福嶋 年輪というか、歩んできた道の長さが武器になっていると感じました。

江南 あくまでもビブリオエッセーは書評のようで、エッセーなんです。本を介したかたちの。4年目突入ですが、改めておもしろい媒体だなあと思いました。

--では今回は『隂山メソッド-』に。

「隂山メソッド 徹底反復 音読プリント 」

<作品再掲>

大好きな詩で私のリハビリ

かつて孫がお世話になった隂山先生の徹底反復シリーズ。そのうちの『徹底反復 音読プリント』に、まさか80歳を超えた私がお世話になるとは思いもしなかった。

数年前から「顎関節(がくかんせつ)症」と言われ、口をあまり大きく開けることができずに困っている。そんなことを施設のお友達に話したら、ご自分が大切にされていたこの本をすぐに貸してくださった。その方はまた違った理由で口が開けにくいので、この本を毎日、音読されていた。親身になっていただいたことが、嬉しかった。

本を開けると「音読名人になるコツ」として「毎日、10分続けよう」などとあり、「お口の準備運動」から始まる。まず北原白秋の詩「五十音」の「水馬(あめんぼ)赤いな ア イ ウ エ オ/浮藻(うきも)に小えびもおよいでる…」。

それから草野心平、金子みすゞ、高村光太郎、宮沢賢治…と私の好きな詩人の詩や作家の文章が次々と出てきた。大きな文字で書かれていて、とても読みやすく、昔を思い出しながら、夢中でページをめくった。

特に賢治の「雨ニモマケズ」と光太郎の「道程」は小学生の頃、弟たちと何度も大声で音読した詩だ。「雨ニモマケズ/風ニモマケズ」「父よ/僕を一人立ちにさせた広大な父よ」と学校で教わった詩を、弟たちに得意げに教えたのだろうか。ついこの間のことのように懐かしく思い出した。それから私は毎朝、口が開けにくいことも忘れ、音読している。なんと最後は「外郎売(ういろううり)のせりふ」まで付いていた。

この本で音読を続けていると口を開けたり、喋ったりすることが幾分スムーズにできるようになった気がした。そして、どうだろう、頭の回転も速くなってきたような気がする。これは気のせいだろうか?

別所昭子さん

<喜びの声>大阪府羽曳野市の別所昭子さん(82)

この本をお借りした施設のお友達は話題が豊富でいつも旅や音楽の話で盛り上がります。エッセーが掲載された時、私は施設から離れて入院中でした。そこで先生や看護師さんたちもエッセーを読んで喜んでくださり、嬉しいやら恥ずかしいやら。音読には不思議な力がありますね。幼いころの弟たちと過ごした故郷の日々はかけがえのない思い出です。そして受賞の知らせまでもたらしてくれた一冊のプリント。驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。

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