和歌山市役所の東側に隣接し、昨年10月に開館した「和歌山城ホール」は、和歌山城の三ノ丸に位置します。最上階(5階)の「屋上庭園フロア」からは、和歌山城の北面が展望できる絶好の場所です。
緑に囲まれた丘は、東側の頂が本丸御殿跡、西側の頂が天守曲輪(くるわ)(郭)で、真っ白な大・小天守と多門櫓(やぐら)で各櫓(天守群)を結ぶ連立式天守の姿が望めます。
この形式は、姫路城(兵庫)、松山城(愛媛)と類似し、三大連立式天守と呼ばれています。
麓(ふもと)に目を向ければ、大手門から西に延びる石垣と、水堀の内側に広がる二ノ丸跡も。まさに、「近世城郭」のイメージを絵にかいたような絶景です。
市内の中心部にある和歌山城には、昭和20年の和歌山大空襲で焼失するまで、江戸時代の天守(国宝)が丘上にそびえていました。
現在の天守は、市民の要望もあって、33年に再建されたものです。外観はコンクリート造りとはいえ、江戸時代の天守と違わないことは、光井渉氏の著書「日本の歴史的建造物-社寺・城郭・近代建築の保存と活用」(中公新書)で「誰もが認める外観の『正しさ』」と高く評価されています。
その白い連立式天守の容姿は、四方からそれぞれ異なった形に見えます。江戸時代の人々も城下町から、現在と同様さまざまな形の天守を眺めていた-。そう思うだけでも、ロマンを感じさせます。